2011年

「がん粒子線治療研究センター」
最先端の医療現場を視察!

2011年11月7日〜8日

11月7日(月)~8日(火)の両日、県議会「厚生労働環境委員会」として鹿児島県内を視察しました。初日は、指宿市にある「がん粒子線治療研究センター」。2日目は、鹿児島市内の精神障がい者雇用を進める「(株)ラグーナ印刷」と、鹿児島市立「かごしま環境未来館」でした。今回の視察先は、いずれも現代の医療、福祉、環境問題について、先進的な取り組みを行っているところでした。

私が、とりわけ注目したのは、指宿市にある「がん粒子線治療研究センター」でした。ここは、21世紀のがん先進医療を行う医療機関であり、ホテルを併設した、滞在型のがん治療施設です。

今日、日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。「がんは不治の病」と言われた時代から、今日では(部位にもよるが)「早期発見、早期治療」によっては、がんは治癒できる、克服できる病気とされています。
しかし、3人に1人ががんでなくなっている現実を見れば、やはりがんは不治の病といわれる所以です。

これまでは、がん治療といえば、幹部をメスで切り取る手術療法、抗がん剤(化学)療法、放射線療法、免疫細胞療法などが一般的です。
このうち、放射線治療というとX線がすぐに思い浮かびますが、放射線にも種類があり、X線、γ線などは「電磁波」、電子線、炭素線(重粒子線)、陽子線などは「粒子線」といわれます。これらの放射線をがん細胞に照射して、その細胞の成長と分裂を止め、がん細胞を壊すというのが「粒子線がん治療」です。
放射線治療は、手術のようにメスを入れて切るなどの痛みがないのが大きなメリットといわれています。

しかし、一方で、がん細胞の周囲の正常な細胞も放射線で損傷を受けてしまうことから、場合によって、吐き気などの体調不良や体力低下、抜け毛などの副作用が起こります。そこで、がん細胞だけをターゲットに効果的に照射して、周囲の正常な細胞の損傷をより抑えることができる治療として、放射線治療の最先端ともいえる「粒子線がん治療」が注目されています。

がん粒子線治療研究センター04.jpg「がん粒子線治療研究センター」前にて
がん粒子線治療研究センター01.jpg「がん粒子線治療研究センター」全景
がん粒子線治療研究センター02.jpg粒子線照射装置。照射機器は、360度回転する。
がん粒子線治療研究センター03.jpg粒子線発生装置
がん粒子線治療研究センター05.jpg粒子線照射装置前にて

クリックすると拡大します。

粒子線治療には、炭素原子を用いた重粒子と、最も軽い水素原子を用いた陽子線とがあります。今回訪問した「がん粒子線治療研究センター」は、水素原子を用いた陽子線型の粒子線治療施設です。
陽子線が体内に照射されると、正常な細胞はほとんど影響されることなくがん細胞に到達します。そして、がん細胞の核の中にあるDNAにあたります。陽子線は、DNAを直接的あるいは間接的に傷害を与え、がん細胞は損傷をうけます。そして、数回の治療の後、修復能力を超える損傷を与えられたがん細胞は死に、体外に尿などで排出されます。患者への負担が少ない分、人によってはゴルフや他のスポーツ、余暇を楽しみながら治療を受けています。

粒子線がん治療のメリットは、①外来での治療が可能(滞在可)、②治療時間が短く身体への負担が少ない。③ピンポイントでがんの部位を治療できる。逆に、デメリットは、①保険適用外のため高額(1つの患部につき約300万円)、②複数転移した癌に対する治療は難しい、③患部に放射線治療を受けた経験のある場合は適応条件に合わない場合がある、などです。

粒子線がん治療は、最先端の医療、身近に医療施設が少ない、高額の治療費がかかる(1部位‐300万円)ため、まだまだなじみが薄いがん治療です。しかし、今回の視察で感じたのは、「粒子線がん治療」は不治の病さえといわれるがんに対し、治療-治癒という望みを与えてくれているということです。

私は、これから継続してこの治療法について勉強していきたいと強く思っています。
A