9.視察報告   

    • 児童虐待(①身体的暴力を子どもに振るう身体的虐待、②養育を拒否したり放棄したりするネグレクト、③性的暴行を加える性的虐待、④前記以外で、子どもに心理的苦痛を与える心理的虐待)については、近年が増加傾向にあり、児童相談所に保護された子どもが児童養護施設に移されるというケースも増えています。
    • 厚労省によると、2011年度の児童虐待の対応件数は59,919件。統計を取り始めてから毎年増加しており、1999年度の約5.2倍となっています。
    • また、児童虐待による死亡事件も増加しており、2011年度では45例で、死亡した子どもは0歳児が4割強となっています。
    • なお、主たる虐待者をみると、実母が60.4%と最も多く、次いで実父が25.1%となっています。
    • 厚労省によると、要保護児童数の増加に伴い、ここ十数年で、里親等委託児童数は約2倍、児童養護施設の入所児童数は 約1割増、乳児院は約2割増となっています。
    • 内訳をみると、里親・ファミリーホームへの委託児童数は2011年度末4,966人、1999年度末2,122人の2.34倍。 児童養護施設の入所児童数は2012年10月で29,399人で、1995年10月の27,145人の1.08倍。乳児院の入所児童数は2012年10月3,000人 、1995年10月2,566人の1.17倍となっており、いずれも著しい伸びを見せています。
    • しかしながら、こうした虐待、貧困、親との死別など、社会的養護のもとで生活する子ども達は、人一倍ケアが必要な状態の子どもたちです。ところが、社会的養護の中では比較的手厚い養護を受けられる児童養護施設でさえ、慢性的な人手不足でケアが行き届かない、施設数が足りないなど、早急に解決されなければならない問題を数多く抱えています。
    • さらには、社会的養護の枠組みからもこぼれ落ちてしまい、児童養護施設にすら入れずに「自立を余儀なくされる子ども達」も多くいます。
    • 18歳となって施設から出ていかざるを得ない少年・少女たちは、社会的自立ができずに、社会からドロップアウトして、行方の判らない子たちもいます。こうした少年・少女たちの実態については、社会的にもあまりにも知られていない現状にあります。
    • 一般的に、子ども達は家庭の中で親などの保護者から経済面、精神面、教育面での庇護・バックアップを受けながら成長します。このような庇護・バックアップを受けられない子ども達は「一定の学業」(基本的に高校卒業までのこと)を修めるまでは児童養護施設等で過ごし、その後は自活することになります。
    • 子どもが高校に進学しなかった、できなかった場合は、わずか15歳で退所することになります。
    • 「学業を修了したら働く」、一見合理的にみえますが、実際には「学校の授業についていく学力を育めなかった子」、「学校や社会に順応できるだけの生活態度についての家庭教育(=しつけ)を受けられなかった子」、「精神的に不安定で療養が必要な子」など、本来より長期的なケアが必要な子ほど、早期に社会に出て自立・自活することを求められるという矛盾を抱えているのです。
    • こうした矛盾について、木村理事長は「施設出身の子は拠り所がない。施設が我が家であり、そこに戻るしかない。しかし、施設に戻っても居場所がない子たちは、社会的にドロップアウトしてしまう。こうした子どもたちを如何に救うかが課題といえる。」と話をされていました。

    10.結び

    • 代表理事 木村 康三氏.png代表理事 木村 康三氏今回の視察の終わりに、木村理事長に県に対しての要望をお伺いしたところ、「施設どおしが点でしか結びついてなく、行政(児相、福祉事務所、福祉課)、里親会、福祉施設、弁護士会、幼稚園・保育園、企業などが地域で面的につながりを持つことが大切。そのつながりを県が作ってほしい。そうすることにより、ファミリーホームなどの小規模施設の要望も行政側に上げやすくなる。2012年に、福岡市の「こども村」が冊子を作製した際、県が200部購入して、それを県内の里親会に配布したことがある。こうした取り組みが必要。また、国の里親支援専門員の活用を図ることも必要。県の支援は絶対に必要です。」と応えられました。
    • 社会的養護を必要とする児童が増えていくなか、福岡県としての役割と使命は益々重要かつ大きくなっていることを実感しました。
    • 今後の県議会活動を通じ、現場の声を施策に反映していきたいと思います。

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