県議会質問

2013年6月13日

Ⅰ.知事の基本姿勢について

(2)県独自課税について

地方分権の流れの中、自治体の独自課税の先駆けとなった、神奈川県が2001年に導入した臨時特例企業税が、さる3月21日、最高裁判決で、「条例は地方税法の趣旨に反し、違法・無効」との判断を示しました。自治体の独自課税が、違法・無効の判断を下されたのは初めてとなります。

そもそも、地方自治体は、地方税法に規定されている法人事業税や個人住民税などを課税するほか、行政サービスに必要な財源を確保するため、地方税法に規定されていない、いわゆる法定外税や、標準税率を超える税率を独自に課税する超過課税が、地方税法において認められています。この法定外税と超過課税の県独自課税は、2000年の地方分権一括法の施行が拍車をかけ、本県の産業廃棄物税や森林環境税を含め、核燃料税、レジ袋税、宿泊税など、全国で多くの独自課税が新税として誕生しました。

すでに地方税法に、様々な種類の地方税が規定されている中で、独自課税を創設することは、地方自治体の知恵の見せ所でもあります。

本県の独自課税も、当然のことながら、地方税法に規定されている、法定外税と超過課税を独自に課税したもので、最高裁でも、地方税法に基づく課税自主権を否定はしていません。
その産業廃棄物税の次回見直しが2015年、森林環境税の見直しが2018年となり、来年度からは、産業廃棄物税の条例が、継続かどうかの見直し準備段階に入ります。

そこで、知事に3点、お尋ねします。
1点目は、本県の産業廃棄物税と森林環境税について、お尋ねします。これまでの間、税収を通して、趣旨に沿った事業効果は、どのように上がったのか、お尋ねします。

2点目は、この2つの税の継続と見直しについて、お尋ねします。
産業廃棄物税については、「一定の期間を目途に施行の状況を勘案し、必要があると認める時は、規定について検討を加え、必要な措置を講ずる。」と、2回目の見直しには、ゆるやかな対応を示しています。

一方、森林環境税については、昨年の見直しの時、社会保障財源を確保するための消費税の増税論議が進み、復興財源を確保するための個人住民税均等割りの税率引き上げなど、県民の税負担の増加が予定される中での、継続の判断でした。そのことは、昨年12月に出された庁内で検討された、「森林環境税とこれを活用した事業の検討結果」でも、「今後5年を目処に、条例の施行状況、社会経済情勢の推移等を勘案し、必要な措置を講ずるため、森林環境税の再度検討を行う必要がある。」と、税のあり方の変更も示唆しています。

今後、2つの税のあり方について、知事は、どのように考えてあるのか、お尋ねします。

3点目は、新たな県独自課税について、お尋ねします。
法定外税で、今回、厳しい判決が出ましたが、今後、2税以外での新たな独自課税について、県として、どのような考えをお持ちなのか、お尋ねします。

【知事答弁】
①「産業廃棄物税」の事業効果について

  • 「産業廃棄物税」については、産業廃棄物の排出抑制、再生利用等の促進を図ることを目的として、平成17年度に導入した。
  • 導入後、本県における産業廃棄物の排出量、焼却施設や最終処分場への搬入量が減少するとともに、資源として再生利用される割合は増加しており、「産業廃棄物税」は、循環型社会づくりに寄与しているものと考えている。
  • また、税収を活用し、1)産業廃棄物の再資源化施設整備に対する助成やリサイクル製品認定制度の活用による排出抑制・リサイクルの促進、2)不法投棄等対策専門員の配置や市町村が設置する監視カメラへの補助による廃棄物の適正処理などの事業を進めてきた。
  • その結果、県が認定したリサイクル製品の販売額は平成19年度の20億円から平成23年度の154億円へと大幅に増加している。また、廃棄物の不法投棄件数については平成19年度の107件からここ数年は3分の1程度に減少している。

②森林環境税の事業効果について

  • 森林環境税は、森林の有する公益的機能の重要性に鑑み、荒廃した森林を再生し、健全な状態で次世代へ引き継ぐことを目的に、平成20年度に導入。
  • これまでの5年間で約1万3千へクタールの間伐等を実施し、10年間の目標である2万9千へクタールに対する進渉率は、45パーセントとほぼ計画どおり進む。
  • これにより、森林内に太陽の光が差し込み、植生の回復や土壌流出の減少が見られ、水源のかん養や土砂災害の防止など、森林の持つ公益的機能が回復しつつある。
  • なお、近年の松くい虫被害の急増を受けて、今年度から、県又は市町村が指定する海岸防風林を対象に、駆除対策に要する市町村負担分に森林環境税を活用し、負担軽減を図る。

③「産業廃棄物税」と「森林環境税」の今後のあり方について

  • 産業廃棄物税と森林環境税については、それぞれの条例の規定に基づき、「産業廃棄物税」は平成27年、「森林環境税」は平成30年の見直しに向け今後検討を行うこととしている。その際には、先述の事業効果を含めた条例の施行状況や社会経済情勢の推移等を十分踏まえ、税のあり方について検討する必要がある。

④新たな独自課税について

  • 独自課税については、地方団体が社会保障など住民生活に不可欠な行政サ一ビスを安定的に提供するために、地方税法において認められている貴重な財源調達手段である。—方で、新たな独自課税の検討に当たっては、「臨時特例企業税」の違法判決に鑑み、地方税法の趣旨を十分踏まえるとともに、経済に与える影響や住民の税負担の状況などにも、十分配慮する必要がある。

⑤森林環境税の事業効果について

  • 森林環境税は、森林の有する公益的機能の重要性に鑑み、荒廃した森林を再生し、健全な状態で次世代へ引き継ぐことを目的に、平成2 0年度に導入。
  • これまでの5年間で約1万3千へクタールの間伐等を実施し、10年間の目標である2万9千へクタールに対する進渉率は、4 5パ一セントとほぼ計画どおり進む。
  • これにより、森林内に太陽の光が差し込み、植生の回復や土壌流出の減少が見られ、水源のかん養や土砂災害の防止など、森林の持つ公益的機能が回復しつつある。
  • なお、近年の松くい虫被害の急増を受けて、今年度から、県又は市町村が指定する海岸防風林を対象に、駆除対策に要する市町村負担分に森林環境税を活用し、負担軽減を図る。