県議会質問

2013年6月13日

Ⅳ.教育問題について

(4)体罰問題について

全国で、相次いで体罰が表面化したことにより、文部科学省は、体罰の実態を把握し、体罰禁止の徹底を図るため、全国調査を行ったところです。その第1次結果が4月に報告され、昨年4月から今年1月までに、本県の公立の小・中・高、合わせて52件の体罰が明らかになりました。全国では840件、都道府県別では、岐阜県の64件についで、2番目に高い結果となりました。

この体罰の報告を踏まえ、知事並びに教育長に以下7点、お尋ねします。
1点目は、今回の調査結果についてです。体罰件数の高い結果を、どのように受けとめられたのか、教育長にお尋ねします。

2点目は、体罰の定義づけについてです。体罰の実態の第1次報告とあわせて、文部科学省では、改めて、体罰の定義づけを行いました。身体に対する侵害、肉体的苦痛など、体罰の定義は、一応明確になりました。

今回、文部科学省が、改めて定義づけをし、全国に通知した、「体罰の禁止及び児童・生徒理解に基づく指導の徹底」について、どのように受けとめられ、いかに徹底されるのか、教育長にお尋ねします。

3点目は、体罰のない学校づくりについてです。体罰の定義に基づき、体罰のない学校づくりの取り組みに期待がかかります。一方、正当行為と判断される事例として、教員が防衛のためにやむを得ず生徒に力を加えたり、反抗した児童の背後に回り、体をきつく押さえるなどの行為を認めています。

5月27日の文部科学省の有識者会議が策定した、運動部活動の指導名目の体罰を防ぐガイドラインでは、正座やランニングは認めながら、長時間にわたる無意味な正座や、水を飲ませず長時間のランニングは体罰としています。

このため、体罰かどうかの判断は、先生の価値観に委ねられ、児童・生徒や保護者などから、体罰と訴えられる問題が生じかねません。この体罰の定義づけから生じると予想される問題も解決し、体罰のない学校を、どのようにして作られていくのか、教育長にお尋ねします。

4点目は、言葉による暴力の位置づけについてです。
本県では、過去、中学校で、先生の言葉の暴力などで、生徒が精神的苦痛を受け、自殺に追い込まれた事件が起きました。
文部科学省の今回の通知では、言葉による暴力の定義づけがありません。言葉による暴力も、体罰と思います。本県では、どのように位置づけられ、先生の言葉による暴力の解消に、どのように取り組まれているのか、教育長にお尋ねします。

5点目は、私学の体罰の実態把握についてです。今回の、文部科学省の1次報告では、私学の報告はされませんでした。私学の調査も、今回初めてされたはずです。公立と私立が同時に結果報告することにより、体罰問題解決に一体的に取り組めると思いますが、私学の報告がなされなかったことを、知事はどのように理解されているのか、お尋ねします。

その上で、6点目は、本県における私学の体罰問題についてです。報道で、柳川市の私立杉森高校における、監督の体罰問題が明らかになりました。部員3人のほほを少なくとも計4回たたき、「指導のための体罰は必要と思った。」「よかれと思ってたたいた。」と話すなど、誤った認識も明らかになりました。

本県では、今年の2月に、私立を含め、全小中高校に体罰禁止の通知を出していますが、この学校では、文書を配っただけで、通知の徹底がされませんでした。
本県の私立の小・中・高における、体罰の実態と、その解消のための取り組みを、どのように把握されているのか、知事にお尋ねします。

この際、7点目は、私学に対する学校運営の指導のあり方についてです。
この私立高校では、生徒の保護者でつくる育成会と後援会が、学校法人を相手取り、保護者が納めた会費の返還を求めて訴訟を起こし、地裁は訴えを全面的に認め、学校法人側に1800万円の支払いを命じる判決がくだされたばかりです。

また、今年度から募集を停止する2学科の取り扱いも、県に届けた後、教職員へ決定したことを知らせるなど、事前周知がなかったり、他のことでも訴訟が起きています。これまで、私学の運営に対して、県は私学振興のために助成金は出すが、学校運営は私学任せの感がありました。そこで、この際、県内私学の学校運営の実態調査をされ、私学建学の精神は大事にしながら、改善すべきは改善する姿勢で、私学に指導されるべきと思いますが、知事の考えをお尋ねします。

【教育長ならびに知事答弁】
①オール・イングリッシュ授業の周知徹底について(教育長)

  • 新学習指導要領に沿った授業について、高等学校学習指導要領及び学習指導要領解説は「授業を実際のコミュニケーションの場面とするために、授業は英語で行うことを基本とする。」、「英語による言語活動を行うことが授業の中心となっていれば、必要に応じて日本語を交えて授業を行うことも考えられる。」と記述。
  • 学習指導要領の趣旨の周知徹摩を図るため、高等学校においては、県内全ての教員を対象に教育課程説明会を実施。特に、英語に関しては、英語教員指導力向上事業を実施し、授業研修会の開催や実践事例集の配布等を行っている。
  • 中学校においては、生徒のコミュニケーション能力を育成するため、中学生英語宿泊体験事業を実施するなどの取組を行っている。
  • 中・高の英語教員合同の研修会を開催し、新学習指導要領の円滑な実施に向けて共通理解を図っている。

②英会話力が習得できていない生徒への対応について(教育長)

  • 中学校における学習の成果を踏まえ、学校や生徒の実態を考慮しつつ、新学習指導要領に沿った授業を実施。また、生徒の習熟の程度や授業内容等に応じて習熟度別授業や少人数指導等の学習形態に取組んでいる。
  • 今後も引き続き、生徒の実態等に応じた教育活動を推進することで生徒の能力の伸長を図る。

③人的支援策及び教員の英語力向上のための研修について(教育長)

  • 外国語指導助手については、引き続き学校の実態等を踏まえた効果的な配置に努めるとともに、教職員の配置については、各学校における複数の英語教員による授業を実施するなどの取組に対して、必要に応じて対応したいと考えている。
  • 教員の英語力向上については、教員採用試験においてリスニング試験やネイテイブスピーカーとの英語面接を実施し、英語能力の高い人材確保を図るとともに、採用後は、英語教員指導力向上事業や外国語指導助手と英語教員合同の研修会の実施、海外研修の活用などを含めて、体系的な研修制度の充実に取組む。

④英語力向上のための教育環境整備について(教育長)

  • プロジェクタ一等の整備については、各学校の整備状況・活用状況等の実態を可能な限り速やかに把握するとともに、学校からの要望も踏まえて検討していきたいと考えている。
  • 英語特別教室の設置については、必要に応じて余裕教室の転用など、各学校の実情により対応して参りたい。

⑤大学入試との閨係について(教育長)

  • 新学習指導要領の趣旨は、「閨くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能を総合的に育成するための指導を行い、生徒のコミュニケ一シヨン能力を伸ばすことであり、必ずしも大学入試で不利になるものとは考えていない。
  • 現在、国においても大学入試の在り方について検討がなされており、必要に応じて意見を述べて参る。

⑥体罰件数の調査結果について(教育長)

  • 5月2日に最終結果を公表。平成2 4年度中に政令市を除く公立小・中学校、高等学校及び特別支援学校を合わせて2 3 5件の体罰が、発生していた。
  • 児童生徒への体罰は、法律で明確に禁止されている行為であり、これまでも、体罰によらない指導を徹底してきた。
  • これだけの体罰が判明したことについては、学校と児童生徒や保護者との信頼関係を損なう問題であると厳しく受け止めている。

⑦体罰の定義付けについて(教育長)

  • 平成2 5年3月の文部科学省通知には、通常、体罰と判断されると考えられる行為に関して、具体の例示による参考事例が示されており、懲戒と体罰の区別等について適切な理解促進が図られるものと考える。
  • 既に通知文書により周知徹底を図っているが、今後も研修会等を通じて、継続的に周知徹底を図っていく。

⑧体罰のない学校づくリについて(教育長)

  • 教員が平素から、いかなる行為が体罰に当たるかについての考え方を正しく理解するだけではなく、体罰によらない指導の重要性を理解しておくことが必要と考える。
  • 指導マニュアルの作成に取り組んでおり、今後、文部科学省の通知の周知徹底とともに、 研修会等において当該マニュアルを活用しながら、体罰のない学校づくりの推進を図っていく。

⑨「言葉による暴力」の体罰の位置付けについて(教育長)

  • 「言葉による暴力」は、国による体罰の定義に位置付けられていない。教育活動において叱責することが必要となる場合もあるが、乱暴な言葉により児童生徒の自尊心を深く傷つけることは、体罰と同様にあってはならない。
  • 手引書等の作成や、研修会などでの指導を通じて言葉による暴力を含む体罰の根絶に取り組んできたところであり、今後もこうした取組みを推進していく。

⑩私学の体罰の実態把握について

  • 私学の一次報告は、他県で体罰と懲戒の区別が曖昧なまま、体罰として報)告しているケースもあるということで、一次、二次の区別なく、5月17日までに報告することとされ、各事案についての精査が求められた。これについては、調査の精度を上げるためのものであったと認識している。
  • 私学における体罰の全国集計結果は、今後、文部科学省における集約後に公表される予定。

⑪本県私学における体罰の実態と解消のための取組みの把握について

  • 本県の私学では、平成2 4年度中に、3 3校の学校で8 9件の体罰が発生していたことが判明している。
  • 県は私立学校に対し、懲戒と体罰の区別についての理解の促進、体罰防止の組織的な指導体制の整備等を要請してきている。各学校においては、職員会議等における校長による体罰禁止の周知徹底や研修会等をとおして体罰の防止に取り組んでいるところである。

⑫本県私学に対する学校運営の指導のあり方について

  • 県では、補助金の適正な執行を図る観点から、毎年度、各私立学校における財務状況の報告を求めるとともに、学校改革への取組状況等、各私立学校の運営状況について、ヒアリングを実施しており、経理処理、管理運営が著しく適正を欠く場合は補助金の減額などを行っている。
  • 設置基準など法令に違反している場合には、法令を遵守するよう指導を徹底している。再三の指導にもかかわらず、法令違反が是正されない場合は、最終的には学校教育法に基づき、学校閉鎖を命ずることになる。