2.視察報告
(4)社会福祉法人 福岡県厚生事業団
『福岡県身体障害者リハビリテーションセンター』
『福岡県身体障害者リハビリテーションセンター』は、障がい者の家庭復帰・社会参加等の実現に向け生活力や社会適応力を高めるための訓練・支援を行っています。
①サービスの紹介
同センターは、「障害者自立支援法」の指定障害者支援施設で、日中活動のサービスとして自立訓練の機能訓練と生活訓練を行っており、また居住支援サービスとして施設入所支援を提供しています。
②各種訓練
1)自立訓練(機能訓練)
脳出血・脳梗塞等の疾病や事故により、その後遺症として身体に障害が残った人に対し、医学的・社会的リハビリテーションを効率的に提供し、身体機能の改善や社会生活力の向上に努め、社会復帰を支援します。
利用要件は、①身体障害者手帳を有する人で、おおむね18歳から65歳位までの人、②病院での入院治療を終え、日常生活において常時の介護を必要としない人、③訓練効果が見込まれ、集団生活ができる人、となっています。
利用期間は18ヶ月。定員は94名となっています。
2) 自立訓練(生活訓練)
疾病や事故等により、その後遺症として高次脳機能障害を有する人に対し、個人個人の能力やニーズに合わせたリハビリテーションを効率的に提供し、その人の社会生活力を高め、社会復帰を支援します。
利用要件は、①高次脳機能障害で精神障害者保健福祉手帳を有する人、若しくは高次脳機能障害を理由に障害者福祉サービスの支給が決定された人で、おおむね18歳から65歳位までの人、②病院での入院治療を終え、日常生活において常時の介護を必要としない人、③訓練効果が見込まれ、集団生活ができる人、となっています。
利用期間は24カ月。定員は12名です。
3)施設入所支援
自立訓練の機能訓練、若しくは生活訓練を利用する方で、自宅から通うことが困難な人に対し、日中の訓練を効果的に受けることができるよう夜間の居住の場として施設入所支援サービスを提供しています。定員は100名です。
③訓練の中身
訓練は、医師・理学療法士・作業療法士・支援員・看護師・臨床心理士・言語聴覚士・介護員、及び栄養士の各職員の合議により作成した「個別支援計画書(リハビリテーション実施計画書)」に基づき、総合的な訓練を提供しています。
訓練期間は、初期・中期・後期に分け、到達目標を設定して効率的、計画的に訓練を行っています。
1)理学療法
理学療法は、基本的動作能力の機能維持・改善を目的としています。
運動療法では筋力や関節の動きを向上させ、起き上がり・立ち上がり・歩行などの維持・改善を行います。物理療法では温熱や電気を用い、痛みや緊張の緩和を図ります。
特徴的な訓練としては、移動改善を目的に同じ能力の方達を集めてグループ訓練を行っています。
また、行動範囲の拡大を目的に外出訓練や交通機関利用訓練を行い、単独での外出や家族の送迎が無くても一人で交通機関を利用して外泊出来るように支援していきます。
なお、利用を終了された後も機能維持が継続できることを目的に家庭でも一人で出来る訓練を身に付けて頂きます。
2)作業療法
作業療法では、様々な活動を行い、
- 作業耐久性の向上(身体的・精神的)、
- 失われた機能の代償方法(利き手交換や、両手で行う作業を片手で行うための動作方法の工夫や使用する道具の工夫など)の習得、
- 高次脳機能障害による認知や行為障害に対し、本人の自覚を促し対処法を共に考えます。
その他、着衣・起居・移動・移乗など、生活に必要な基本動作の訓練や、退所後の生活にあわせた家事訓練(主に調理)を実施しています。
また、単身生活希望者には、訓練室に一泊して頂き、買物、朝・昼・晩の調理、後かたづけ、入浴、洗濯、ベッドメーキング、掃除などを体験することもできます。
更に、休職中の方や求職活動をされる方には、他のスタッフと連携して、復職や就職にむけた支援をしています。
3)言語療法
言語療法では、コミュニケーション能力に障害のある方に対して、その改善の努め、円滑な日常生活を送ることができるように支援を行っています。対象者は、主に脳卒中後遺症の失語症の方々で、構音障害の方の訓練も行っています。
訓練は、主にグループ訓練を中心とした訓練で、症状に合わせて2〜6名を一グループに、一グループ週3回程度、訓練を行っています。この他、個別訓練や自主訓練も行っています。
個別訓練は、言語聴覚士が1名のため全員を対象に行うことは難しく、主に復職希望の方や比較的発症からの期間が短く与えられた課題を居室で行うことができる方、コミュニケーション手段が確立していない方などが対象で、週1回程度です。
また、「週3回のグループ訓練だけでは物足りない」「もっと訓練がしたい」と訓練を希望される方のために訓練以外の時間帯も訓練室を毎日、開放しており、言語聴覚士と話し合いながら課題を進めていくこともできます。
4)心理療法
リハビリテーションとは一般的には身体機能を回復させて社会復帰して行くことだと考えられますが、心理学的には新しい自分自身を発見して行く過程だとも言えます。
心理判定員は、心理療法を通して支援を行ないます。
心理療法の具体的内容は心理判定及び心理カウンセリングです。
心理判定ではいくつかの心理検査を実施し知的・認知的能力を客観的に測定してその結果を話し合い、またその方のお人柄に関するお話しなどを通してその方の心理状況のアセスメントを行ないます。
そして、それらを通してその方を取り巻く周りの人々がご本人を、そして何よりもご本人自身が自分をより良く認識・理解して行かれることの支援をしています。
心理カウンセリングではご希望のある方にのみ継続的に心理面接の場を設定して自分自身を語って頂き、自己理解を深め自分の限界を心理的に押し広げて行かれる支援をしています。
脳卒中や外傷などの脳損傷による高次脳機脳障害のある方については、詳しい検査や認知訓練も行ないます。
5)その他の訓練、プログラム
- グループ訓練
- 交通訓練
- 買物訓練
- 外出訓練
- 外出・地域社会参加プログラム
- 就労・地域生活支援プログラム
- パソコン操作訓練
- 職業適応訓練
④利用申し込み
窓口は、市役所・区役所・役場の障害者担当の窓口です。
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