Ⅱ.視察報告

1.「沖縄北部森林組合」

(1)組合の概要

「沖縄北部森林組合」は、沖縄県名護市字宇茂佐にあり、管内地域は沖縄北部地域11市町(名護市、本部町、金武町、大宜味村、東沖縄北部森林組合管内図.jpg村、今帰仁村、宜野座村、恩納村、伊平屋村、伊是名村、伊江村)で構成されている。

地域総面積は62,844ha、森林面積は35,862haで、森林比率57%となっている。

地質は、大半が古生層粘板岩や、砂岩からなっており、土壌は国頭マージの強酸性で、有機質に乏しく、生産性は低い。

気温は年平均23.4℃で、温度が高く、降雨量は年平均2,600mmとなっている。

組合員数は173名(正・準含む)。出資金は2,000万円弱。組合員は個人で林業を営んでいる方はおらず、事業のほぼすべては県・自治体からの受託事業である。

組合の収益は、2億6千万/年で、上記のとおりほぼすべて県・自治体からの受託事業である。

管内の主要な木はイタジイ(学名はスダジイ(Castanopsis sieboldii)。ブナ科シイ属の常緑広葉樹。ナガジイともいい、シイという場合には本種を指す)で、一部センダンがある。

(2)組合の事業内容について

木材収入、特に住宅建材収入はない。それは、一つには建材として売れる木材がない。
二つ目は、県内の住宅の大半が鉄筋・コンクリの住宅で、木材が使われないことにもある。
これは、台風対策ということで、戦後、住宅の鉄筋・コンクリ化が進められたことによる。

管内の木材は住宅建材として使えないため、一部加工製品としているが、生産品目、生産量、売上額ともに微々たるもの。
昨年度の販売額は、燃料炭、木灰、床下調湿材、土壌改良材、生しいたけ、タケノコ辛み漬を合わせて、247万2千円しかなってない。

主要木であるイタジイはチップ化し、木質バイオマス発電や燃料としている。また、センダンは成長が早く、20年程度で伐採し、家具の材料として使っている。

県・自治体からの受託事業は、大きく3つある。一つは森林整備事業で、1億4百万円/年で、これが組合の一番の収入となっている。二つ目は利用事業で、松枯れ対策のための病害虫防除が主で1億613万円となっている。三つ目は事業物資で、椎茸種菌の原木や菌床を売ったりして、年間313万程度の売り上げとなっている。

保安林、防風林はリュウキュウマツを植えている。ただし、戦後からスギやヒノキを植えているが育たない。気候、土壌のせいもあるが、本土のようにまっすぐに伸びないし、土着の木の浸食をうけることが大きい。

(3)質疑応答

[林業としての生業はどうか?]
(具志堅常務理事)
「個人で林業を営んでいる人はいない。個人では収益が出ない。しかし、組合にとっても厳しい時代にある。
沖縄県は、平成25年度から森林整備事業において指名競争入札を導入しており、より高い積算能力が求められている。また、森林・林業再生プランの進展により施業提案型林業への転換が組合にも求められ、計画的で創造性に富んだ事業の企画立案・提案が住等になっている。これまでどおりの受託事業というわけにはいかない。」

[具体的に、新たな取り組みはあるのか?]
(具志堅常務理事)
「組合は、主に造林、治山、森林病害虫防除等の森林整備事業を行うとともに、昨年度から新規の自主事業として名護市型の持続可能な森林経営モデル構築事業に取り組んでいる。これは名護市と沖縄県と組合とが協働で行う実証事業で、森林整備のみならず、山林から生み出された森林資源を利用した地域全体で産業を振興する新たな地域循環型産業の仕組みを構築するものです。」

[受託事業のうち、病害虫防除について聞きたい]
(具志堅常務理事)
「受託事業のうち、病害虫防除も組合の大きな収入のひとつ。詳しくは係の松田さんに話をしてもらう。」
(松田係員)
「沖縄県も松くい虫の被害が大きい。その対策に県も自治体も頭を悩ませている。組合が受託している病害虫防除事業は3つある。一つは薬剤防除で、約1千486万円/年。二つ目が伐倒駆除で、約6千190万円/年。三つ目が樹幹注入で、約1千783万円/年で、合計で約9千460万円/年となっている。
具体的には、防除の対象となる松のほとんどはリュウキュウマツである。樹幹注入は、だいたい幹の大きさが30cm以上のものを対象にしており、1本の木で4〜5本の薬剤を打つ。1本約5千円だから、1本の木でだいたい2〜3万円かかる。幹の大きいものだともっとかかる。しかし、効果は4〜5年しかない。」

[どのようなリュウキュウマツを病害虫防除の対象としているのか?]
(松田係員)
「公園、学校、役所・公的機関の敷地内の松に加え、指定地域、いわゆる保全松林などが松が対象。松くい虫の被害は拡大しているが、防除、駆除にはお金もかかるし、人手もかかるため、対策が追い付いてない状況。」

[抵抗松の植林はどうなっているのか?]
(松田係員)
「抵抗松はまだ植林していない。現在、県森林研究センターが抵抗松を研究開発中であり、広く植林するまでには至っていない。」
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沖縄北部森林組合.jpg沖縄北部森林組合

玄関で集合写真.jpg玄関で集合写真(左二人:事務職員、中:具志堅常務理事、右:松田係員)