Ⅱ.視察報告
3.「震災廃棄物選別処理施設」
昨年(2011年)3月11日の「東日本大地震」は、東北3県に甚大な被害を出しています。地震に伴う津波により、被災3県の沿岸部を中心に、建物などの震災がれきが大量に発生しました。東北3県で2758万4千トンにも上っています。このうち、宮城県内分は1,872万5千トン(岩手県5,250万トン、福島県3,674万トン)、更に、石巻ブロック(石巻市、東松島市、女川町)は884万5千トンとなっています。
震災以降、被災地の復興の大きな妨げとなっているのがこの震災がれきです。しかも、堆く積まれた震災がれきは、被災地の方々にとって心の重しとなっており、「震災がれきの山を見るたび、心が折れそうになる」とさえ言われています。被災地にとって、震災がれきの早急な処理こそ、復興の第一歩でもあります。
今回の視察では、宮城県環境生活部佐々木源次長(震災廃棄物担当)、宮城県環境生活部震災廃棄物対策課処理推進第一班佐藤仁副班長より説明を頂きました。
(1)石巻ブロック震災廃棄物選別処理施設の概要
国及び宮城県では、発災後3年以内の震災がれき処理の完了を目標に、取り組みを進めています。今回、視察したのは「石巻ブロック震災廃棄物選別処理施設」です。
① 業務契約概要
- 発注者 :宮城県
- 受注者 :鹿島、清水、西松、佐藤、飛島、竹中土木、若築、橋本、遠藤特定建設工事共同体
- 業務場所:宮城県石巻市雲雀野町地内
- 工 期:平成23年9月17日〜平成26年3月25日
- 契約方法:プロポーザル方式
- 業務価格:1,482億6,156万5,550円
- 業務概要:災害廃棄物処理 311万8千トン
- 津波堆積物処理 29万3千㎥
② 施設概要
- 石巻ブロックは、Aヤード(50ha)、Bヤード(18ha)、Cヤード(6ha)に別れ、それぞれヤードによって処理業務が異なり、付随施設も建設されています。
【Aヤード】
- 事務所
- トラックスケール×6基−搬入される廃棄物の重量を計測
- 粗選別ヤード×4系列 −混合廃棄物を重機で選別、破砕機で30センチ以下に破砕
- 破砕選別ヤード×8系列−破砕物を不燃物、可燃物、土砂等に機械選別・人力選別
- 土質改質ヤード×3基 −津波堆積物を土砂とゴミに分別
- コンクリート破砕設備×1基−コンクリートガラを破砕
- 土壌洗浄ヤードA −混合廃棄物から出た土砂を洗浄
- 土壌洗浄ヤードB −津波堆積物を洗浄
- トラックスケール放射線ゲートモニター×3基−搬出する廃棄物の重量、放射線量を計測
【Cヤード】
- フレコンバック仮置ヤード
【Bヤード】
- 焼却施設×5基−2種類(ストーカ炉3基、ロータリーキルン2基)の焼却炉5基が設置され、国内最大規模の1日、1,500トン(300トン×5基)を焼却する。
(2)施設視察
① Aヤードの一角にある北九州市用可燃物選別、集積場
北九州市用可燃物選別、集積場Aヤードの一角に、北九州市で焼却処分される可燃物の選別、集積場があります。焼却可能な可燃物の選別は、まずブルドーザーで展開場にがれきを広げ、それを10人がかりで目視検査し、不燃物等が混じっている場合は手で取り払います。選別した焼却可能な可燃物は、一旦、ここで仮置きされ、船で北九州市に運ばれます。
なお、この集積場では、空間放射線量を定時で計測しており、そのデータは常に公表されています。
北九州市は9月6日、宮城県石巻市から運び込まれる震災がれきの放射能濃度や周囲の放射線量を測定した結果を専用のホームページに掲載しています。(9月4日に公開された放射能濃度は検出される限界値(1キロ50ベクレル未満)を下回り、放射線量はいずれのコンテナ近くも毎時0.05マイクロシーベル)
今後、放射能濃度は測定翌日にHPに掲載されます。なお、アドレスは専用のものとなっています。
http://wat.trace-recycle.or.jp/rts/trace/list
本年9月17日、北九州市(市内3工場)による、宮城県石巻市のがれき焼却が始まりました。がれきの広域処理は西日本で初めてとなります。焼却料は、1日約110トンを焼却し、2014年3月末までに最大約6万2,500トンを処理する予定となっています。焼却に係る委託費は6億2,200万円。
② 破砕選別ヤード
搬入された混合震災がれきは、まず粗選別ヤードで、破砕機によって30cm以下に破砕されます。次に、破砕選別ヤードで、破砕物を不燃物、可燃物、土砂等に機械選別します。さらに、人力で可燃物と不燃物を選別します。
③ 焼却炉
ロータリーキルン焼却炉焼却炉は2種類あり、ストーカ炉3基、ロータリーキルン2基の、計5基となっています。これら5基の処理能力は国内最大規模であり、1日、1,500トン(300トン×5基)を焼却することができます(石巻市が排出する一般棄物100年分に相当する約650万tのがれきを約2年で処理する能力)。
今日、石巻ブロックの可燃物の量は、当初の見込み676万トンから、312万トンになっています。
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