Ⅱ.視察報告

5.仙台湾南部海岸堤防(名取海岸閖上・北釜地区)

厚生労働委員会_岩手_宮城視察14.png最後の視察地は、宮城県名取市閖上地区の海岸線(仙台南部海岸)で復興、建設が進められている海岸堤防工事現場です。

現地視察は、国土交通省から説明を受けました。



(1)仙台湾南部海岸の概要
仙台湾南部海岸は、宮城県の日本海側に面した、仙台市、名取市、岩沼市、亘理町、山元町にわたる沿岸線です。

震災前は白砂青松の美しい海岸であったということです。現地に立ってみると、そこには太平洋の大海原が広がっており、津波とは無縁さを感じさせる風光明美なところでした。海岸沿いには、津波でなぎ倒された松林が痛々し姿を見せていますが、津波がなければ「羽衣伝説」で有名な三保海岸(静岡市)に負けず劣らず、素晴らしい海岸線であったと思います。

また、この海岸線は、津波で仙台空港が被災したとき、よく映像で流された海岸地区です。津波は、海岸の堤防を越え、松林をなぎ倒し、仙台空港まで押し寄せました。そして、津波はその後、海岸線から内陸地5kmまで押し寄せています。

今回訪れた名取市の仙台湾南部名取海岸岸壁復旧工事現場は、東北地方整備局仙台河川国道事務所が所管しており、工事区間は7区間、総延長30kmとなっています。

(2)海岸保全施設(堤防)の被害状況
仙台湾南部海岸の海岸保全施設(堤防)の被災については、仙台海岸、名取海岸(閖上・北釜地区)、岩沼海岸(相の釜地区)、岩沼海岸(相の釜・納屋地区)、山元海岸(山元地区笠野工区)、山元海岸(山元地区中浜工区)において、津波によるコンクリート堤防がことごとく破壊されました。

海岸部の堤防の破壊については、津波が堤防を乗り越えた際に、堤防の内側(陸側)の被覆ブロック・コンクリートと法面部分が激しく破壊されています。また、海岸の浸食をゆるめ、消波ブロックの役割を果たしているテトラポッドも海岸部に打ち上げられています。

(3)海岸堤防復旧工事工法
厚生労働委員会_岩手_宮城視察15.png堤防工事現場① 陸側法面被覆型工法
上記の堤防の被災状況を踏まえ、今回の海岸岸壁復旧工事は津波が堤防を乗り越えた際にも、堤防の内側(陸側)が壊れにくいよう、高い補強力を持たせています。

具体的には、海岸堤防工事工法は、堤防盛土の上を栗石で固め、更にその上をコンクリートで被覆するというもので、天端高7.2m、天端幅4.0mの強固なものとなっています。

こうした陸側法面被覆ブロック・天端被覆の構造は、今回の津波で被災を逃れ、比較的残存している区間の多い海側法面被覆ブロックの構造にヒントを得て決定されました。

現地事務所では、「1,000年に一度の地震、津波に耐えられるようなものを造りたい」と話をされていました。

② 震災がれきの利用
災害復旧で築造する海岸堤防のうち、仙台市内で整備する堤防には、仙台市内や名取市内で発生した震災がれき(津波堆積土砂、震災コンクリート殻)が活用されています。

③ 環境保全型、景観配慮型の工法
仙台湾南部海岸は、もともと美しい砂浜と松林が続く、風光明媚な海岸線です。したがって、新しくつくる海岸堤防は見た目も配慮し、美しい海岸線に調和するよう、景観に配慮した工法となります。

また、自然環境(動植物)に配慮して海岸堤防復旧を進めるため、環境モニタリングや環境保全対策が検討され、実施されています。施工後、砂で堤防のブロック・コンクリートを被覆し、そこに仙台南部海岸における重要種である「ハマボウフウ」、「ハマナス」が植栽されます。

また、沿岸部の松は津波でことごとくなぎ倒され、枯れ果てています。そこで、あたらしい松も植えられます。

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