Ⅱ.視察報告

4.障がい者雇用事業所「蔵王すずしろ」

視察3日目の最初は、宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉にある障がい者雇用事業所「蔵王すずしろ」でした。

この施設は、蔵王の宮城県側の麓にあり、自然豊かな場所に建っており、障がい者の方々がのびのびと働いています。美味しい水を使った豆腐が人気で、大豆関連商品が施設の運営を支えています。

今回の視察では、「社会福祉法人はらなか福祉会」「蔵王すずしろ」の小石澤邦彦所長より説明を頂きました。

(1)社会福祉法人の説明
「蔵王すずしろ」は、「社会福祉法人 はらなか福祉会」のグループ施設の一つです。「はらから」とは、障がいを有する者も、そうでない者も、同じ「はらから(同胞)」であるという意味が込められています。障がい者が自ら働き、生計を維持し、社会的な役割を担い、自己現実を図るための施設です。

法人全体で、障がい者300名、職員100名が働いている。

全国的に見ても、「障がい者支援施設」で働く障がい者の平均的な労働報酬額(平均賃金)は月額1万〜1万2千円程度です。「はらからグループ」は、労働報酬額(平均賃金)を月額7万円の工賃の実現を目標にしており、障がい者年金と合わせて月額15万円前後での暮らしを叶えたいと努力されています。

今日、「蔵王すずしろ」の平均収入は時給550円、5万8,600円です。「はらから福祉会」武田 元理事長は、これを利用者賃金(工賃)時給700円、月額7万円の工賃をめざし、障がい者年金と合わせ月額15万円の収入を実現するため、日々、取り組みを進められています。

(2)施設概要
① 施設種別ならびに入所者数

  • 就労移行支援12名  
  • 就労継続支援(A型)10名
  • 就労継続支援(B型)18名
  • 就労継続支援(A型)追加 10名   計50名

② 障がい種別

  • 身体障がい者
  • 知的障がい者
  • 精神障がい者
    • のうち、中〜重度障がい者

③ 職員配置

  • 施設長(管理者)1名
  • 副施設長(サビ管)1名
  • 支援員9名
  • 事務員1名
  • 医師(嘱託) 1名

④ 商品

  • 湯葉
  • 大豆商品

⑤ 作業内容

  • 豆腐、豆乳、湯葉づくり

⑥ 平均工賃

  • 時給550円、月平均収入58,600円。

(3)小石澤所長の説明

  • 法人全体の収入は5億7,000万円、すずしろだけで1億3,000万円の収入がある。
  • 工賃を時給700円にするためには、もっと売れる商品の開発、製造、販売しなければならない。宮城県の最賃は685円/時であるので、まずはこれに近づけたい。
  • 一人ひとり障がいの度合いは違うため、生産性によって工賃に差をつけることはない。一生懸命やっているかどうかを見る。
  • どうやって儲けるかは、商品開発に尽きる。付加価値(利益率)が高い商品を開発、製造、販売することが必要。設備投資と人的育成のバランスを取りながらやっている。
  • 法人でコンサルを入れて、経営改善・強化を行っている。
  • 豆腐作りのときに出るおからは、いままで廃棄物処理−廃棄処分をしていた。そのため、廃棄物処理費に膨大な費用を要していた。そこで、産廃処理機を2,800万円で購入(うち1,800万円は助成金)し、「乾燥おから」を作って売るようにした。利益を出している。
  • まだまた商品開発と販売が弱い。理想ではやっていけない。いかに〝金を儲けるか〟が必要。それによって、障がい者が自立できる。
  • 薄利多売でやっている。刑務所の給食、学校給食に豆腐をはじめ、商品を納品している。こうした販売網をもっと広げていきたい。

A
(4)施設写真

厚生労働委員会_岩手_宮城視察09.png① さしみ湯葉の引き上げ

厚生労働委員会_岩手_宮城視察10.png② 厚揚げ用の豆腐の袋結び

厚生労働委員会_岩手_宮城視察11.png③ パック豆腐のシラー

厚生労働委員会_岩手_宮城視察12.png④ 施設が販売している商品

厚生労働委員会_岩手_宮城視察13.png⑤ すずしろ玄関




(①〜③ は施設ホームページから引用)