5.診療費

重粒子線治療は、厚生労働大臣の承認を受けた先進医療の一つです。先進医療の費用は、患者の全額自己負担となります。ただし、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬等)の費用については、公的医療保険が適用されます。

重粒子線がん治療費  3百数十万円
(先進医療=全額自己負担)
診療・検査・薬代など (公的医療保険適用)


なお、現在では民間保険会社から、先進医療の費用を保障する保険商品(「がん保険」や「医療保険」等)が多数販売されています。

また、重粒子線治療の位置付けとして、2003年10月、厚生労働省より重粒子線治療が高度先進医療に認可されています。(2006年10月1日より高度先進医療は先進医療に統合。)

先進医療とは、大学病院などで研究・開発された難病などの新しい治療法のうち、ある程度実績をつみ、治療法として確立しており、保険適用とすべきかどうか検討される段階にある医療技術のことをいいます。2010年1月現在、103件の医療技術が先進医療として認められています。

重粒子線治療に関しては、研究機関、医療関係者、当該病院当事者からも保険適用として認めるよう、政府・厚労省に働き掛けがされていますが、まだ保険適用は認められていません。今後の課題と言えます。

6.結び

『サガハイマット』玄関.jpg『サガハイマット』玄関私は、2011年11月、県議会「厚生労働環境委員会」の視察で、鹿児島県指宿市にある「一般財団法人メディポリス医学研究財団がん粒子線治療研究センター」を訪れました。粒子線がん治療施設は、今回で2ヶ所目となりました。

この「メディポリス指宿」は、「南九州から世界に向けて光を放つ医療」をコンセプトとした一大プロジェクトとして建設されたもので、一般財団法人メディポリス医学研究財団は医療分野を担い、陽子線による粒子線治療を2011年1月より開始しています。

粒子線施設は、今まで「兵庫県立粒子線医療センター」より以西では、この「メディポリス指宿」しかありませんでした。

今回、『サガハイマット』が九州新幹線「新鳥栖駅」前に開設されたことにより、九州新幹線沿線はもとより、九州各県、兵庫県以西の患者さんにとって、がん治療の幅が大きく広がることになります。

とりわけ、重粒子線治療ということでは、兵庫県以西では『サガハイマット』だけであり、期待も大きいものがあります。

実際の治療は、今年の8月からとなりますが、すでに予約も多く入っています。実際、6月現在の予約状況は83件で、そのうち53件は福岡県内の患者で、その他、佐賀県9件、熊本県8件、長崎県件、宮崎県2件、鹿児島2県、大分県1件、その他8件となっています。また、多くの問い合わせもあるそうです。

しかしながら、『サガハイマット』が採算ベースに乗るためには、年800名以上の外来患者を受け入れる必要があります。そのため、今年8月から稼働を始めてからも、採算ベースに乗るためには今後4年間ほど(1年目200名/年、2年目400名/年、3年目600名/年、4年目から800名/年)かかる見込みです。

いずれにせよ、重粒子線治療はがん患者にとって大きく期待を寄せる治療法です。今後、健康保険の適用などが図られれば、もっと身近な診療機関として利用できるものと思いました。

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