Ⅱ.視察報告

2.11月14日

(2)白川村役場にて「世界遺産の活用による地域振興政策」についてヒアリング・意見交換

次に、岐阜県白川村を訪れ、役場のほうより「世界遺産の活用による地域振興政策」について説明を頂きました。

当日は、板谷孝明村長、成原伸次白川村議会事務局長、大澤珠生観光振興課主査が出席して頂きました。

白川村の位置.jpg白川村の位置板谷孝明村長.jpg板谷孝明村長説明頂いた職員.jpg説明頂いた職員

①白川村の概要説明
白川村は、周りを山に囲まれた小さな村で、行政区内の95%は山林で、農地は0.5%しかありません。気候は飛騨寒地多雨型で、冬季4〜5カ月間は積雪という豪雪地帯で、特別豪雪地帯指定を受けています。

岐阜県大野郡に位置し、南の岐阜県側は高山市、飛騨市、北の富山県側は南砺市、西の石川県側は白山市と隣接した村です。人口1,710名、高齢化率は29.7%という、いわば過疎の村です。

この過疎の村に、年間150万人もの観光客が押し寄せます。それは、白川郷・五箇山地区の合掌造りの集落が1995年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されたからです。

②白川村の生き残り
近年では、「平成の大合併」の流れの中、白川村も飛騨地域の全ての市町村で結成した「飛騨地域合併推進協議会」にも参加していましたが、近隣市と合併することで「白川郷」のイメージが損なわれるのはないかという声に押され、2003には合併協議会から離脱し、村単独で生き残ることを決定しています。そのため、現在、岐阜県北部の飛騨地域で唯一の町村となっています(その他の町村は合併により高山市・飛騨市・下呂市)。

白川村では、戦後のダム建設ブームで多くの合掌造り集落がダム底に水没、1960年代中期以降(昭和40年代)の高度経済成長時代には合掌造り家屋が村外に売却されたり近代的家屋に立て替えられたりもしたそうです。

こうした開発優先の流れに対し、白川村は廃屋になった合掌造り家屋を1967(昭和42年から移築保存を開始、1972(昭和47)年からは「白川郷合掌村」として公開してきました。

村内荻町住民有志により1971(昭和46)年、「白川郷荻町集落の自然環境を守る会」が結成され、合掌造り家屋の保存のため「売らない、貸さない、こわさない」という住民憲章を制定し、合掌造り家屋と景観を保存してきたそうです。

こうした活動の結果、1995(平成7)年のユネスコ世界遺産(文化遺産)への登録につながったのです。

村が単独で生き残れるのは、「白川郷」観光がもたらす観光関連収入に加え、ダム(7か所)と発電所(7か所)を行政区内に有しているということにより、税収に加え、補助金、交付金収入により、村単独で生き残ることができています。

③質疑応答
[観光収入による税収は増えたか?]
年間150万人が訪れるが、観光による税収が増えたということはない。観光では来るが、宿泊は別の場所。通過するだけになっており、もっと宿泊してほしい。」

[民宿があるではないか?]
「民宿はあるが、基本的にそこの持ち主の方もそこに住んでいる。したがって、客を連泊させたり、多くの宿泊客を入れようという気はない。」

[白川郷を保存維持していくための苦労は?]
「沢山ある。世界遺産登録後は、急激に観光客も増えて、多くの車が押し寄せてくるようになった。そのため、駐車場が足りない。したがって、いまは駐車規制などをやっている。
合掌造り集落の中には車を入れさせない。前に、地元の方が、自分の土地を勝手に駐車場にしたりしていたが、いまはそれもやめてもらっている。」
「また、沢山の人が観光客として訪れるが、マナーの悪さもある。合掌造りの民家の中に勝手に入り込む、入ってはいけないという所でも入っていく。農作物を盗っていく。合掌造りの家に落書きしたり、傷をつけたりする。また、農耕具などを盗んで行ったりする。マナーに訴えるしかない。」
「観光地化により白川郷の魅力が損なわれては何にもならない。世界遺産登録が取り消されるんではないかという心配がある。私たちは白川郷を守っていかなければならない。」

白川村役場前.jpg白川村役場前ヒアリングの様子.jpgヒアリングの様子

(3)世界遺産「白川郷」視察(一部、白川村役場HPから引用)

①世界遺産「白川郷」とは
白川村役場でヒアリングならびに質疑応答の後、世界遺産「白川郷」を視察しました。

1995年、世界遺産(文化遺産)に登録されたエリアは、岐阜県と富山県にまたがる「白川郷・五箇山の合掌造り集落」をいいます。

白川郷の全景.jpg白川郷の全景「白川郷」は、岐阜県内の荘川流域の呼称で、大野郡白川村と旧荘川村(現在は高山市)にあたる地域です。なお、「五箇山」は、富山県内の庄川沿いにある5つの谷間(赤尾谷、上梨、下梨、小谷、利賀谷)の総称です。

代表的な合掌造り家.jpg代表的な合掌造り家合掌造り家屋を利用した食事処.jpg合掌造り家屋を利用した食事処

②合掌造り家屋とは
合掌造り家屋とは、豪雪地帯に合わせた建築様式で、日本の民家のなかでも独特の特徴をもつ家屋のことをいいます。ユネスコは、この合掌造り集落が大家族制度や地域の生産体制に見合った土地利用の顕著な見本であることなどを評価し、世界遺産(文化遺産)に登録しました。
ちなみに、これらの合掌造り家屋はすべて個人所有で、現在もこの合掌造り家屋で生活を営まれています。

登録地域の面積は、構成資産68ヘクタール、それを保護する緩衝地帯58,873ヘクタールとなっています。

なお、構成資産は3集落で、○荻町集(岐阜県大野郡白川村)、○菅沼集落(富山県南砺市)、○相倉集落(富山県南砺市)です。

白川村全体図.jpg世界遺産エリア.jpg

③これからの課題
村役場の職員の方々も話をされていましたが、この「白川郷」を守るためには地元の方々の努力は勿論のことですが、日本が世界に誇る世界遺産(文化遺産)であるだけに、国民の協力は不可欠です。

未来にわたり、「白川郷」が世界に誇る世界遺産(文化遺産)であり続けるためには、合掌造り家屋群とともに、周辺の自然環境を守らなければなりません。

それが私たち国民の責務でもあります。

白川郷にて_1.jpg白川郷にて_2.jpg

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