Ⅱ.視察報告

3.2月3日:「鹿児島メガソーラー発電株式会社」

「鹿児島メガソーラー発電株式会社」は、国内最大となる太陽光発電所です。
本社は鹿児島市にあり、2013年11月1日より売電を開始。

施設入口.jpg施設入口

科学館担当者.jpg科学館担当者

施工業者より説明を受ける.jpg施工業者より説明を受ける

(1)「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」会社概要

発電能力

太陽光発電システム70MW

※京セラ製高出力太陽電池モジュール(242W)を約29万枚設置

所在地

鹿児島県鹿児島市七ツ島2丁目

土地面積

127万㎡(東京ドーム約27個分)

事業内容

太陽光発電による九州電力への電力供給

事業期間

発電所完成後、九州電力への電力供給開始から20年間

発電電力量

78,800MWh/年(予測)

環境貢献

25,000t/年のCO2削減に貢献できる見込み

着工日

2012年9月3日

竣工日

20131031

売電開始日

2013111

総投資額

270億円

代表者

代表取締役社長 北村 信夫(京セラ㈱執行役員上席)

設立日

2012710

資本金

43億円

出資会社

京セラ㈱、KDDI㈱、㈱IHI、㈱九電工、㈱鹿児島銀行、㈱京都銀行、㈱竹中工務店

会社運営

京セラ㈱

建設工事

㈱京セラソーラーコーポレーション、㈱九電工、㈱竹中工務店

運営保守

㈱京セラソーラーコーポレーション、㈱九電工

用地賃貸

IHI

主要銀行

㈱みずほ銀行


南東側より全景.jpg南東側より全景

南西側より全景(奥は桜島) (京セラ提供).jpg南西側より全景(奥は桜島) (京セラ提供)

(2) 「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」とは

「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」は、京セラグループが鹿児島市七ツ島に建設したメガソーラー発電所です。出力は約70MWで、2014年2月現在、国内最大の規模となる大規模太陽光発電所です。

①建設経過
発電事業者の鹿児島メガソーラー発電には、京セラのほか、KDDI、IHI、九電工、鹿児島銀行、京都銀行、竹中工務店の7社が出資しています。

太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)はドイツSMAソーラーテクノロジー社製で、京セラソーラーコーポレーション(京都市)、九電工、竹中工務店の3社による建設工事共同企業体が建設し、運用・保守(O&M)は京セラソーラーコーポレーションと九電工の2社がそれぞれ担当しました。

総投資額は約270億円で、みずほ銀行を幹事とするプロジェクトファイナンスで調達されています。

②敷地
敷地面積は約127万m2で、東京ドーム約27個分に相当します。
敷地はIHIの工場跡地であり、IHIは出資者としてメガソーラー事業に参画するとともに、約20年間にわたって土地の賃貸料を得ることとなっています。

外周は約4.3kmあり、歩いて一周すると約1時間30分ほどかかるそうです。なお、広大な土地の整地時には、GPS(全地球測位システム)を搭載したグレーダー(整地用の建設車両)を使ったということです。

③発電能力
年間の予想発電量は、一般家庭の電力使用量約2万2000世帯分に相当する、約7万8,800MWh。発電した電力は、全量を九州電力に売電しており、鹿児島県内の電力需要の2.2%を賄えるということです。

④太陽光パネルと設置
整然と並んだ太陽光パネル.jpg整然と並んだ太陽光パネル太陽光パネルは約29万枚もあり、まさに大迫力です。なお、約29万枚の太陽光パネルを並べるための基礎工事では、延べ5,400台のミキサー車を使い、2万m3のコンクリートを流し込んだということです。

架台を支える基礎は3万7,660本、組み上げた架台の鉄骨の重さは4,840トン、架台を止めるアンカーボルトは15万本。

こうした建設工事を1年2カ月間で終えるために、九州の施工会社208社から、延べ7万8,000人が建設現場に従事し、ピーク時には1日に450人が動員されたということです。

⑤パネルの傾き
フレームの隙間から火山灰や埃を雨で流す設計.jpgフレームの隙間から火山灰や埃を雨で流す設計発電所は、桜島の南西に位置しています。桜島の火山灰は、北側への風に流されていくため、メガソーラーのある南西側一帯には火山灰が降り積もる日は少ないということです。

また、仮に太陽光パネルの上に降り積もっても、翌日には海風でほぼ吹き飛び、雨が降ればきれいに流れ落ちるということです。
なお、火山灰や埃が降り積もった場合を想定した工夫も施されています。太陽光パネルを収めるフレームの底部の左側、中央、右側の3カ所に、約8mm幅のスリット(隙間)が3本られています。これにより、雨の日にはこのスリットを通じて、火山灰や埃が雨で流れ落ちていく仕組みとなっています。

それでも万が一火山灰が堆積し、予想発電量を下回る日が6日程度続いたら、トラックの荷台に高圧洗浄機と発電機を載せてパネルに沿って移動しながら29万枚を洗浄するそうです。

その際には、発電所で準備している井戸水による200トンの洗浄用水を使います。

太陽光パネルは、20度に傾けて架台に設置されています。鹿児島県における太陽の南中高度で計算すると、年間発電量を最も多く確保できる角度は26.3度ということです。

しかし、この角度で設置すると、太陽が傾いて影が長くなる朝や夕に、影が隣の太陽光パネルにかからないように考慮して間隔を広く空けた場合、70MW分の太陽光パネルを並べられなくなるため70MW分の太陽光パネルを並べられ、かつ、年間発電量をより多く確保できる20度としたということです。

架台では、海に面した発電所ならではの対策を施されています。塩害と強風に強い材料や構造設計となっています。
架台に使う鋼材には亜鉛めっきが施されており、また、鹿児島県の設計用基準風速である33.7mを超えて、風速60mの強風が吹き続けた際の耐久性など、寸法を4分の1に縮小したモデルを使った風洞実験も行われ、実際の設置設計に生かしたそうです。

⑥塩害対策
PCSに、SMAソーラーテクノロジー社製を採用した理由は塩害対策ということです。
設計当時の日本メーカー製のメガソーラー向けのPCSの塩害対策には、PCSの筐体の外を、さらに塩害対策を施した筐体で覆わなければならなかったそうです。

この追加の筐体のコストだけでなく、筐体の中の温度上昇を抑えるための空調が必要になり、ランニングコストがかかったということです。

ストリング監視を担う接続箱.jpgストリング監視を担う接続箱これに対して、SMA製は、標準仕様で塩害対策しているため、こうした追加の筐体や空調が不要で、機器をそのまま設置できる利点があるとのことです。更に、ファンによる自然冷却と密閉空間との熱交換というシンプルな構成などによって筐体と空調の不要を実現しています。 

「サポート体制など未知数な面はあるが、全世界で30%のシェアを握る実績や、塩害地域や砂漠といった過酷な地域での豊富な経験に賭けた」(京セラソーラーコーポレーション エンジニアリング部責任者の北 道弘氏)ということです。

太陽光パネルの設置角度の選択と同様に、70MW分の太陽光パネルを設置するためには、このPCSの省スペース性が重要だったそうです。

また、SMAのストリング監視システムが導入されています。接続箱にセンサーを組み込んで、複数のパネルで構成するストリング単位で発電量の変化を測定し、異常を検出することができるそうです。

⑦パワコンの配置と国内初の太陽光パネルへの避雷針
太陽光パネルの避雷針_1.jpg七ツ島のメガソーラーは、約210m×110mを一つの区画とし、2MW分の発電設備が配置され、この区画が36区画あります。
一つの区画には、太陽光パネルが碁盤の目のように敷き詰められた中央付近に道が通り、出力500kWの4台のPCSとサブ変電所が置かれています。この道は、クレーン付きの4トントラックが通行でき、太陽光パネルの避雷針_2.jpg太陽光パネルの避雷針PCSの故障時などは迅速に部品の交換作業ができる仕組みとなっています。

PCSは区画の中央に置かれており、太陽光パネルを直列につないだ接続箱から最短距離で集電できるほか、PCSから発電所の北西にある変電所までの配線を、直線状に地下に敷設するなど、施工の期間短縮とコスト削減に役立てられています。

メガソーラーから約350mの位置に九州電力の五位野変電所があり、地下に敷設した送電線を通じて系統に接続されています。

さらに、太陽光パネルやPCS、サブ変電所の周囲には、高さ約4m50cmの避雷針が立てられています。避雷針は1,380本あり、太陽光パネルまで避雷しているのは、国内で唯一だということです。

⑧パネルの基礎
基礎工事「一発仕上げ」.jpg基礎工事「一発仕上げ」パネル設置の基礎工事は、建設時には約210m×110mという2MWごとの36区画を6ブロックに分けて、海側から陸側へと順次工事が進められました。

基礎工事の短期化を図るため、生コン車からコンクリートを型枠に流し込んで、後処理なしに完成させる「一発仕上げ」が採用されています。

太陽光パネルの前後の間が約3.5mあることから、生コン車が通行し、そのまま流し込むことで実現できたそうです。

今回は、その型枠に金型を使うことで、型枠や鉄筋の専門の職人が携わらなくても基礎を作成でき、後期が短縮されています。

なお、金型の作成にはコストがかかるそうですが、3万7,660本の基礎を順番に作っていくため、コスト増を抑えられたそうです。また、この金型は、基礎の中に組み込む鉄筋をセットすると、コンクリートと一体で作成できる構造とし、従来の専門の職人による鉄筋の組み込みをなくししています。更に、雨天時にも基礎を作成できるように、この金型には、テントのような雨よけを取り付けられています。

 (13/11/26 加藤伸一:日経BPクリーンテック研究所引用)

(3)展示見学施設「鹿児島七ツ島ソーラー科学館」について

鹿児島七ツ島ソーラー科学館.jpg「鹿児島メガソーラー発電所」敷地内に、一般の方々が太陽光発電について学ぶことができる展示見学施設「鹿児島七ツ島ソーラー科学館」が建設され、2013年11月6日より見学が開始されています。

この施設は、「地球環境とエネルギーを考える〜期待される鹿児島七ツ島メガソーラー発電所〜」をコンセプトに、地球環境問題や太陽光発電のしくみなどについてわかりやすく解説する見学施設です。A
①展示見学施設の概要

施設名称

鹿児島七ツ島ソーラー科学館

設置場所

七ツ島メガソーラー発電所入口付近

敷地面積

6,898.00m2(鉄筋コンクリート造 2階建て)

延べ床面積

484.74m2

見学開始日

201311月6日  事前予約制(原則1週間前まで)

開館時間

10:0016:00 

休館日

月、火曜日および年末年始(12/29日~1/3

入館料

無料

予約受付

TEL099-262-2102    FAX099-262-2128

②「鹿児島七ツ島ソーラー科学館」の全景

施設外観_1.jpg

施設外観_2.jpg

施設外観

内館(1階).jpg内館(1階)

2階展望コーナー.jpg2階展望コーナー