Ⅳ.視察報告

2.「大野城市教育サポート支援センター」

2ヶ所目の視察先は、「大野城市教育サポート支援センター」でした。

同センターは、大野城市役所内の教育指導室内に設置され、2014年4月23日に開設されたばかりです。

(1)センター側出席者

見城教育委員会教育部長.jpg


見城教育委員会教育部長  
高野センター室長  
(写真左:見城教育部長、右:高野室長)

(2)センター設置の背景

大野城市においても、いじめ、不登校、発達障がい等特別支援教育、非行問題をはじめ、学校における様々な課題が惹起し、市として対策が求められていました。

更に、2013年9月に国の「いじめ防止対策推進法」が施行され、社会全体総がかりで子どもたちのいじめをなくすため、保護者や学校、行政の役割などが明記され、自治体として子どもたちのよりよい成長に取り組むことが求められることになりました。

また、「学校教育法施行令一部改正」により、障がいのある子どもも、ない子どもも、できるだけ同じ場で学ぶ「インクルーシブ教育」を進めることが示されました。

こうしたことから、大野城市として、子どもたちやその保護者の悩みや不安の解消のため、「大野城市教育サポート支援センター」を設置しました。

今年度の予算は、全体で1,300万円です(市の持ち出し1,000万円、国の就学相談支援事業費が300万円)。

予算のほとんどは人件費で、約1,000万円は専門員の賃金となっています。

(3)センターの概要と特色

同センターは、いじめ、不登校、発達障がい等特別支援教育、その他の非行問題など、学校における様々な問題、子どもたちやその保護者の悩みや不安の解消を図る目的で設置され、「0歳から義務教育修了までの一貫した支援体制」づくりの一環として運営されています。

行政と教育委員会が共同し、縦割りの弊害を克服するとともに、小・中学校、私立を含む幼稚園、保育所と連携し、保育所から小・中学校までの児童生徒とそ の保護者までを対象としてこのセンターがサポートし、「インクルーシブ教育」の推進、いじめの克服、発達障害児の教育保障、さらには家庭支援などに取り組んでいます。

こうした私立の幼稚園・保育所、小中学校までの児童生徒とその保護者までを対象とするサポートセンターというのは全国的にも例がなく、極めて先進的な取り組みといえます。

(4)センターのメンバー

サポートセンターは18名のメンバーで構成され、内訳は、以下のとおりです。

①事務職員

  • センター長
  • 指導主事(総括)

②教育専門

  • 指導主事(いじめ防止、特別支援教育、人権教育、教育相談)
  • 適応指導教室指導員
  • ことばの教室指導員
  • 不登校対策サポートティーテャー

③心理・福祉専門

  • 学校心理専門員(臨床心理士)
  • 学校社会福祉専門員(社会福祉士)
  • 就任臨床心理士
  • 主任主事
  • 総務管理主事

(5)相談件数・内容について

本年4月に開設し、6月末までの相談件数は104件です。

相談については、継続して対応する必要があれば、担当者と副担当、臨床心理士、社会福祉士でチームを組み、学校と協力しながら対応されています。

また、市の広報紙やPTAの会合、報道機関等、様々な媒体での周知により、発達や就学、特別支援教育に関する相談が増えているとのことです(約25%)。

(6)現状と今後の課題

①発達や就学相談、特別支援教育に関する対応

  • 発育や発達の悩みに対して、発達検査及びカウンセリングを随時実施。
  • 市のこども健康課が所管する「3歳児検診」(集団検診)に、センターの臨床心理士、指導主事を派遣し、3歳児の様子を観ている。
  • 大学や医療機関から支援の申し出があり、リーフレット監修をしている。
  • 保育所や幼稚園へのセンター職員による巡回相談等を協力依頼。
  • 発達や就学に関するリーフレットを作成する。

②いじめ防止等に関する対応

  • センターは、各学校が策定した「いじめ防止基本方針」に対する指導を実施。
  • 本年6月市議会で「大野城市いじめ防止条例」が議決された。
  • 各学校での「いじめ防止対策委員会」に、センターの臨床心理士や社会福祉士を派遣予定。
  • 本年8月5日に「子どもたちのいのちを守る研修会」を開催予定。
  • 「大野城市いじめ防止条例」を含めたいじめ防止について、市民に配布するリーフレットを作成する。

(7)まとめ

質疑応答.jpg質疑応答この支援センターは、県内では初めての取り組みということで、マスコミでも大きく取り上げられました。

市は、いじめ、不登校、発達障がい等特別支援教育、非行問題をはじめ、学校における様々な課題に対応・対策することを目的としてセンターを設置しました。

自治体として子どもたちのよりよい成長に取り組む姿勢に感心し、敬服した次第です。

取り組みは始まったばかりですが、この取り組みの重要性と必要性を痛感しました。とても素晴らしい視察でした。


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