Ⅱ 視察報告

【7月29日】

1.「駐モンゴル国日本国大使館」

(1)対応者

  清水 武則 特命全権大使
  山本 圭吾 二等書記官

(2)報告

①今回、ご対応頂いたのは、清水特命全権大使でした。清水大使は大分県のご出身で、我々(福岡から来た)視察団を大いに歓迎して頂きました。

清水大使は、77年に大使館職員として一度来られ、それ以降、4回目の赴任となっています。そして、今回、4回目の赴任では特命全権大使となっています。

今回、わが会派は福岡県とモンゴル国との友好提携(経済、文化、学術等の連携・交流)を進めるためのご尽力をお願いするとともに、『2020年東京オリンピック』にあたり、モンゴル国選手団の福岡県内の合宿・キャンプ誘致にお力を頂くよう要望しました。

②清水大使からは、まずモンゴル国の現況(政治、経済状況)についてお聞きしました。
以下に、その概要を記します。

  • 現在、ウランバートルの人口は130万人。この10年間で50万人の増。そのうち、70万人がゲル地区に住んでおり、ゲル地区問題はモンゴルの最大の課題と言っていい。
  • 国の財政は厳しい。特に、石炭価格が下がったことにより、鉱山収入の減少に伴う税収が減っている。外貨収入が減っているため、外国への支払いが滞っている状態。
  • インフレ率は10数パーセントにも達している。
  • こうした経済状況だが、日本政府として大きな興味を持って見ている。とりわけ、日本の民間資本はモンゴルに熱い目を向けている。近年では、三井銀行、三菱UFJ銀行がウランバートルに駐在所を置くなど、これから日本とモンゴルとの経済関係は強化されてくる。
  • 「ノモンハン事件」(1939年5月から同年9月にかけ、旧満州国とモンゴル人民共和国の間の国境線をめぐって発生した戦争。名目上は満州国とモンゴルの国境紛争なのだが、満州国は日本の傀儡国家、モンゴルはソ連の傀儡国家ということで、実際には日本軍とソ連軍が戦争した。)から、今年で75年目を迎える。8月にはロシアと中国の領袖がモンゴルを訪れる。
  • 来年は終戦70年。ロシア、中国、韓国、北朝鮮では、何らかのモニュメンタルが起こる可能性がある。このとき、モンゴルを経済的に取り込んで、日本包囲網を敷き、日本バッシングを行う恐れがある。我々は、そうならないように努力する。
  • モンゴルの輸出の90%、輸入の40%は中国。経済では中国依存度が高い。しかし、モンゴルは、中国に対して劣等感を持ってない。小さい国だが、気骨がある。
  • 家畜は5千万頭いるが、これで国力を上げるとはならない。また、鉱山もあるが、富の集中というか、鉱山も国民の所得を全体として引き上げることにはなってない。
  • 日本のODAだが、無償支援は最後となる。今後は、日本の民間企業による経済関係を深めることが大切。
  • 鉱山でとれる鉱物は、ほとんどが中国にとられている。このため、モンゴル政府は「外資投資規制法」を制定した。この「外資規制法」とは、モンゴル政府が成長分野と指定する資源・金融・通信について外資出資比率が49%を超える場合、かかる出資に対して、政府の事前審査や国会の承認を義務付けるものである。同法はもともと、「オユントルゴイ鉱山」開発に携わってきた開発会社(オーストラリアとカナダの資源開発会社の合弁会社)を、中国の国営企業が買収を取得しようとしていることが明らかになった際、モンゴル政府が急きょ導入した投資規正法である。この法律は、中国の国営企業がオユントルゴイ鉱山開発に関わることを防止することを目的としていたといわれているが、結果として、外国企業の投資意欲が減退し、対モンゴル投資が急減し、2012年の直接投資は4割近く減少した。日本企業も影響を受け、モンゴルの鉱物資源開発会社の株式の3分の1以上を取得しようとする場合には、事前にモンゴル政府の承認が必要となった。同法制定より、日本企業によるモンゴルの鉱山開発は大きな影響を受けた。モンゴル政府承認の際の、審査プロセスの不透明さもあいまって、伊藤忠商事・三井物産の「タバン・トルゴイ炭鉱」の鉱山開発は停滞している。
  • しかし、こうした外国からの投資が下がったことを受け、モンゴル政府は同法を廃止することを決定、新たな投資法を制定し、投資環境の改善を目指すとしている。具体的には、外国企業からの投資も、国内企業からの投資と同等に扱う。また、契約段階で有効であった法律や規制を一定期間、変更しないことを確約する。政府や国会の審査制度は、撤回されることとなる見通しである。
  • 新たな投資法制定以降は、モンゴル経済は大化けする可能性がある。日本として、民間企業による鉱山開発、石炭液化、電力開発など、大型プロジェクトはこれから。
  • モンゴルは、国内でつくれるものは国内で作り、外貨の外国流出を少なくすることが大切。
  • レアメタルの発掘の調査ができてない。中国にあるものは、おそらくモンゴルにもあると思うので、鉱山開発、特にレアメタル開発は大切。
  • 資源はたくさんあるが、政府の投資政策がうまくいってない。そのため、経済は滞っている。
  • モンゴルは、地理的にロシアと中国に挟まれ、経済的には韓国とのつながりも強いので、日本も含め、全方位外交といえる。
  • 環境対策については、北九州市さんに来て頂いて、アドバイスを受けている。いま、モンゴルの人たちは石炭の生焚きだが、これが環境にすこぶる悪い。豆炭にして活用した方がいいが、そのための設備に50億円くらいかかる。10年前、こうした設備を作るようにモンゴル政府に話をしたが、おかねが無いと言って作らなかった。結果、その後、毎年、10億円ほどのおカネが環境対策に飛んで行ってしまっている。10年前に50億で作っておけば、その後のおカネをかけなくて済んだ。いまさら、日本の無償援助で建設するわけにはいかない。
  • 福岡県がモンゴルに対してできることはたくさんある。
  • 福岡県からは、昨年、商工会の方々が来られた。日本国とモンゴル国との政治的関係強化、経済連携の強化については、特にこれから数年が非常に重要になる。これから、日本とのつながりが増えていくよう、私も努力していきたい。

③両国間の連携をお話しされた後、「モンゴルの大気汚染は深刻な問題である。福岡県は、北九州市が公害を克服した経験と実績を持っている。環境対策を含め、福岡県として独自のモンゴル国支援ができると思う。」と述べられ、本県との関係強化に期待を述べられました。」

清水大使と会見、意見交換.jpg清水大使と会見、意見交換④そして、我が会派として清水大使に対し、福岡県とモンゴル国との経済連携を求めるとともに、『2020年東京オリンピック』の開催にあたり、「モンゴル国選手団の福岡県内の合宿・キャンプ誘致」に尽力を頂くよう要望しました。

これに対し、清水大使は「福岡県さんの熱心さを強く感じた。ご要望に添えるように努力したい。また、福岡県とモンゴル国とのつながりについても、出来ることはやらせて頂きたい。」とお答え頂きました。


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