Ⅱ 視察報告

【7月29日】

2.モンゴル国『国会議事堂』ならびに『ウランバートル市役所』

馬に乗るスフバートルの像。奥の建物が国会議事堂.jpg馬に乗るスフバートルの像。奥の建物が国会議事堂次の視察先はモンゴル国『国会議事堂』ならびに『ウランバートル市役所』訪問・視察でした。

ウランバートル市の中心地に「スフバートル広場」があります。通称「国民広場」とも呼ばれているそうです。
広場の由来となっているスフバートルとは、ダムディン・スフバートル氏のことで、モンゴルを独立に導いた軍人・革命家のことです。モンゴルでは有名な人物だそうです。

「スフバートル広場」の北側に『国会議事堂』があり、広場の西側に面したところに『ウランバートル市役所』が建っています。

(1)モンゴル国会

モンゴル国会は「国民大会議」といいます。一院制で、議員定員は76名。任期は4年です。

各党配分は、民主党34、人民党26、公正連合11、国民勇気・緑の党2、無所属3となっています。現在の政権は、民主党と公正連合、国民勇気・緑の党の連立政権です。

国会は、いま閉会中であり、議会は開会されていませんでした。しかし、国会議事堂地下に「モンゴル政治歴史博物館」が開館しており、この博物館を視察してきました。

この博物館は入場無料で、誰でも入れます。モンゴルの歴史的を語る986の品々が展示されています。

国会議事堂正面には、巨大なチンギスハーン像があります。ソ連統治の社会主義時代は偶像支配ということでチンギスハーンの名前を出すことも阻まれたそうですが、民主化後、2006年にチンギスハーン像が作られました。
いまではモンゴルを代表する観光地にもなっています。

(2)ウランバートル市役所

その後、国会議事堂前の国民広場に隣接している『ウランバートル市役所』を視察し ました。

ウランバートル市議会は45議席で、選挙区で30議席、比例代表で15議席が選出されます。

国会議事堂.jpg国会議事堂

ウランバートル市役所.jpgウランバートル市役所

ウランバートル市役所は、いまは「スフバートル広場」の西側に立っていますが、ウランバートル市西部に新しい庁舎を建設する予定となっています。

新市役所の新規建設は、バトウール市長の選挙公約であり、ゲル地区のソンギノハイルハン区周辺の9ヘクタールの土地に新市役所を建設するとしています。

バトウール市長が、新市役所建設をゲル地区のソンギノハイルハン区に決めたのは、いくつか理由があります。

一つには、現在、モンゴル国の全ての政府機関はウランバートル市内中心部、すなわちバガトイロー周辺に集中しているため、これが交通渋滞、都市中心部の密集の主原因となっており、その解消のため。

二つには、ゲル地区対策です。新市役所をゲル地区へ移転させ、ゲル地区の住環境を改善するとともに、新都心として再活を進めるためです。

その上で、

  • 今後4年以内にゲル地区を快適な生活環境の住宅街、団地として再開発する。
  • 将来のオリンピック誘致をめざすため、新ウランバートル市の中心部を首都で一番人口が多いソンギノハイルハン区に建設する。
  • この地を住民20万人が暮らす副都心として発展させ、インフラや公共サービスを総合的に整備する。

としています。

3.「国連ハビタット・モンゴル国事務所」

(1)対応者

ハビタットモンゴル事務所 
 国内政策マネージャー  エンハさん (Enkh-tsetseg shagdarsuren)

(2)報告

国連ハビタットでの意見交換.jpg国連ハビタットでの意見交換7/29、最後の視察先は「国連ハビタット・モンゴル事務所」でした。


今回は、ハビタットモンゴル事務所の国内政策マネージャーのエンハさんによるレクチャーと質疑応答でした。


エンハさんの説明

  • ウランバートル市の最大の課題は「ゲル地区問題」です。
  • ここ10年、ウランバートル市の人口は急増しています。現在、市の人口は130万人で、10年前に比べて50万人以上も増えています。この人口急増の要因は、遊牧民のウランバートルへの流入によるものです。
  • 近年、深刻な雪害や移住の自由化、更には、都市にあこがれて草原での牧畜生活を捨てて首都に移住する人々が急増しています。市の人口は130万人のうち、70万人はゲル(遊牧民のテント式の住居)に住む人たちです。市の郊外にゲルを建て、そこに住んでいます。
  • これらの移住者は、政府や市からあてがわれたウランバートル郊外の敷地を柵で囲い、そこにゲルや簡易な家を建てて住んでいます。このような地域を「ゲル地区」といい、ウランバートル市中心部を取り囲むように「ゲル地区」が延々と広がっています。
  • 「ゲル地区」では、上下水、道路、学校などの基礎インフラの未整備が最も深刻な問題です。ハビタットはこうした「ゲル地区」の住環境改善のため、5つのゲル地区を選び、ウランバートル市、政府関係機関、住民と共同で、基礎インフラの整備事業を実施しています。
  • この事業の計画を「ゲル地区生活環境改善計画」事業といいます。本事業は、日本政府のJICAを通じた支援で実施されており、公民館やその他の公共設備を必要としている5つのゲル地区に住む5万人の生活環境改善を目的としています。
  • この事業の特徴は、国や市が策定した事業を一方的に進めというものではなく、5つのゲル地区を47のコミュニティーに分け、各コミュニティーごとに、そこに住む人々の自発的かつ自律的な論議によって事業計画を策定し、それに基づいて公共事業が行われます。
  • コミュニティーによっては、進める公共事業の優先順位が異なっています。ここは保育所、ここは学校、ここは病院、ここは老人施設という具合に、それぞれ一番必要とする施設の建設からはじめます。

ゲル地区には、電気は通っていないだけでなく、上下水道はなく、便所は敷地内に穴を掘り、そこで用を足しています。住環境は極めて悪くなっています。
学校、病院、福祉施設もごく限られた地域にしかなく、社会インフラは無きに等しい環境です。

こうした住環境の改善のため、国連ハビタットはモンゴル国はもとより、各国から資金を集め、住環境改善に取り組んでいます。

日本も多額の無償支援を行っています。今回、そうしたハビタットの活動を知ることができました。
A

国連ハビタットモンゴル事務所.jpg国連ハビタットモンゴル事務所

エンハさん.jpg左)エンハさん