Ⅱ.視察報告:11月18日(月)

4.筑紫野市「産業廃棄物最終処分場」

一日目の最後の視察先は、筑紫野市平等寺にある「産業廃棄物最終処分場」(安定型埋立地)を視察しました。

高台から処分場を望む.jpg高台から処分場を望む県職員による概要説明.jpg県職員による概要説明現地視察.jpg現地視察

今回視察した場所は、筑紫野市平等寺にある「産業廃棄物最終処分場」です。ここには、「株式会社 産興」の安定型最終処分場(埋立地)と、それに隣接する「旧村川組」の安定型最終処分場(埋立地)があるところです。

(1)経過

①「旧村川組」処分場の概要と経過
「旧村川組」の安定型最終処分場(埋立地)は、第一期処分場34万㎥(3.5万㎡)、第二期処分場24.7万㎥(1.6万㎡)、第二期処分場拡張部78.8万㎥(3.9万㎡)、計137.5万㎥(約9万㎡)という規模です。

この処分場は、1985年に最終処分場の設置届が出され、1986年3月に県から処分業の許可が出され、埋め立て業を開始しました。

しかし、違法行為の発覚により、県は2004年5月に「措置命令」を発出、容量超過の撤去を命じました。その後、2006年3月に事業者が急こう配の段取り・整地作業を行ったものの、2006年8月31日の「措置命令」の履行期限を過ぎたいまも、容量超過の撤去はできていません。

②「株式会社 産興」処分場の概要と経過
「株式会社 産興」の安定型最終処分場(埋立地)は、1988年6月に第一期処分場届け出、1993年6月に第二期処分場設置許可と7月に焼却施設設置許可、1999年3月に選別施設設置と、処分場並びに関連施設の拡大を続ける。 

ところが、1999年10月6日、第二期拡張部で硫化水素ガスによる従業員3名が死亡するという事故が発生。県は、ただちに廃棄物の搬入及び埋立行為を中止させ、「改善命令」を発出する。

県は、2003年1月31日に許可容量超過等について「改善命令」を発出。同年10月、県は産業廃棄物処理業許可の更新に際し、埋め立て処分に係るものを不許可とする(中間処理の焼却、選別は許可)。

2005年6月、県は中間処理を経ずに廃棄物を埋立処分していたため、廃棄物処理に係る全ての許可を取り消し、受託産業廃棄物の適正処理について「指導文書」発出する。

2008年9月12日、筑紫野市民ら117名が「公害等調整委員会」に原因裁定を申請。2012年6月15日、「公害等調整委員会」の裁定が出されるが、「申請人には被害は認められない」として市民側の申請を棄却している。

(2)問題のポイント

①県が正式に許可した業者、処分場であること
どちらの業者も、県が正式に業の許可を出した業者であること。そして、どちらの処分場も、県が正式に許可を出した処分場であることを押さえておかなければなりません。

つまり、法・条例に基づいて県が正式に許可した、合法的に設置された処分場において、違法・脱法的な行為が行われ、それによって死亡者が出たり、周辺環境を悪化させる硫化水素ガスや汚染水の流出が起こったということです。

そのことはつまり、合法的に設置された処分場において、違法・脱法的な行為が行われたとしても、県の監視が十分にいきとどいていなし、できていない、目が届いていないことを物語っています。

業者側にしてみれば、違法・脱法的行為を恒常的に繰り返していたとしても、大量の硫化水素ガスや汚染水が流出しなければ、すなわち事が表沙汰にならない限り、違法・脱法的行為を続けるというわけで、このことがすなわち、産廃処分場内で何が行われているか判らない、ひいては県への不信を招く結果となっているわけです。

②違法・脱法行為の責任がとられているのか
「旧村山組」の処分場は、2006年8月31日の「措置命令」の履行期限を過ぎたいまも、容量超過の撤去はできていません。

「株式会社 産興」の処分場では、3名もの(従業員の)死者を出したにもかかわらず、だれも刑事責任を問われていません。

どちらの地元の市民も、この二つの業者に対して「捨て得、逃げ得、破産得」ということを言っています。法・脱法的な行為をやっておきながらも、最終的な責任(違法に埋立したゴミでありながら、それを撤去しない)を取らず仕舞いということです。

(3)感想

「旧村山組」、「株式会社産興」、そして飯塚市内住の「藤宏産業」といい、いずれの業者も、それこそ〝羽振りのいい〟ときがあったにもかかわらず、違法・脱法行為が明らかになるとその責任を最後までとっていない。

「公害等調整委員会」も市民側の申請を棄却する。地元住民にとっては、まさに〝誰を信用すればいいのか〟、〝誰に頼ればいいのか〟という思いです。

県は、「捨て得、逃げ得、破産得」を許してはならないという強い姿勢で事の解決にあたらなければ、県の産廃行政への信頼は決して回復することはないでしょう。

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