Ⅲ.視察報告:11月19日(火)

2.太宰府市「九州国立博物館」(一部、九博HPより引用)

「九州国立博物館」全景(HPより).jpg「九州国立博物館」全景(HPより)最後の視察先となったのは太宰府市にある「九州国立博物館」(「九博」)です。
「九博」は、大きな地震を想定した免震構造となっており、今回は「九博」の免震構造を視察しました。

(1)「九博」の免震構造

①建物の概要
「九博」は、2002年4月、建築着工。2004年3月、建物全体が完成しました。

160m×80mの長方形で、全体は蒲鉾型をしています。屋根の一番高いところは36mあり、国際競技の可能なサッカー場がらくらく一面すっぽり入るそうです。

敷地面積は160,714.88㎡、建築面積14,622.62㎡、延床面積30,085.42㎡。地下2階、地上5階の建物です。

建物の構造は鉄骨軸力ヴォールト構造で、外部仕上げは屋根−金属プレートフラットルーフ工法(チタンt=0.4発色、溶接工法)、外壁−アルミカーテンウォール+MPG工法、S造・SRC造(地下部)、一部免震構造(博物館機能部)となっています。

このうち、免震装置はイソレーター-147台、弾性すべり支承-45台、鋼棒ダンパー-40台となっています。

②免震構造
「九博」のある福岡県地方は、679年の「筑紫大地震」以降大きな地震が起こっておらず、地質学的にも大地震はしばらく起こらないと考えられていました。

ところが、約1,300年ぶりとなる2005年3月に福岡県西方沖でマグニチュード7.0の地震、「福岡西方沖地震」が発生し、今後も警固断層に起因する、より大きな規模の地震が懸念されています。

「九博」の免震構造.jpg「九博」の免震構造建物の地震に対する備えとしては、「免震構造」=積層ゴムを設置した免震層で集中的に地震動のエネルギーを吸収して建築物への影響を緩和するや、「耐震構造」=建築物を堅牢にするなどがありますが、「九博」は収蔵庫や展示室部分に「免震構造」を採用しており、震度7の揺れを震度4以下に抑えることができるそうです。

免震層に設置した「免震装置」は、水平方向の急激な揺れを緩やかな揺れに変える装置として、小さい揺れ幅に対応する「天然ゴム積層ゴム」、大きい揺れ幅に対応する「弾性すべり支承」と、揺れ幅を減衰させる装置の「鋼棒ダンパー」からなっています。
これらの装置により、2005年3月の「福岡西方沖地震」では、太宰府は震度4の揺れを観測しましたが博物館の免震部分は震度2以下へと揺れが軽減されたそうです。

地下の免震装置.jpg地下の免震装置

会派視察団.jpg会派視察団

また、展示される文化財については、テグスや演示具による固定、免震装置を組み込んだ演示台の使用などの対策により地震に備えています。

「文化交流展示室」にある高さ7mの石塔は特に対策を講じられており、支柱で各部分を支えるとともに下部に特別な免震装置を設けられています。

このように、「九博」では数百年に一度起こるかもしれない地震に建物としての備えをしているそうです。

一度地震が発生すると文化財は多大な被害を被るため、「九博」を文化財の展示・公開や保管施設としてのみならず、文化財の安全な避難所として活用してほしいとのことでした。

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