県議会質問

平成23年度 6月定例県議会 一般質問

2011年7月5日

2011年7月5日 平成23年度 6月定例県議会 一般質問.pdf

1.「新行政改革大綱」について

11-07-05 県議会一般質問3.jpg最初に、今年度、小川知事のもとで策定されます、次期行政改革大綱、いわゆる「新行政改革大綱」について質問致します。

今6月定例議会の開会日、知事は本会議での議案説明の際、歳出予算の内容説明のなかで、「今後進めていく改革の指針となる新たな行政改革大綱を策定します。」と述べられました。行政改革を進めていく上で、その指針となるべき大綱を策定することは当然ですし、それはこれから先の4年間の、小川県政の行革の方向性を示すものです。

しかし、「新行政改革大綱」の策定にあたって最も重要なことは、その内容はこれまで本県で取り組まれた行革の成果と課題を十分踏まえたものであることが大切です。

小川知事は議案説明の中で、「福岡県には大きな発展の可能性がり、本県の持つ潜在的なポテンシャルの高さ」を指摘されるとともに、「時代の変化を的確に捉え、県民の皆様の思いやニーズを適格に受け止め、全身全霊で県政に取り組む。」決意を示されています。

一方で、基本的に行政改革とは、県民ニーズに応え、行き届いた行政サービスを提供するという、行政本来の立場の半面、厳しい財政状況のなか、財政規律を守り、行政効率の向上に努めるという、いわば二律背反性の課題を背負ってもいます。

知事にとって、「新行政改革大綱」の制定は、スクラップ&ビルド、行政のシフト代え、ボトムアップといった、今後の県政の在り方について、県内各地域の特性や事情を考慮し、様々な県民ニーズに応えるため、県の行政組織をどのように構築するのか、リーダーシップを発揮する、まさに手腕の見せどころでもあると考えます。

そこで、以下、知事に3点、教育長に1点、質問致します。

まず1点目に、県人事課が行った「平成22年度長時間時間外勤務者の実態調査」では、多くの部で月平均60時間を超える勤務者が見られます。
また、総務事務センターがまとめた「平成22年度県職員健康管理の概要で見た健康相談件数及び長期病休者の推移」では、30日以上の長期病気休暇者は総数として減っているものの、精神疾患、いわゆるメンタル疾患で休む職員数は逆に増えており、長期病休者のうちに占める精神疾患の割合は56%を超える状態となっています。

先に、文部科学省が発表した「平成21年度教育職員に係わる懲戒処分等の状況について」という資料のうち、福岡県教育委員会関係のデータでは、平成13年から平成21年までの9年間で見ますと、病気休職者は年度を追うごとに増加しており、平成21年度は県全体で385名、うち精神疾患による休職者数は255名、実に66%にも上っています。

麻生前知事は、「ここ数年は、精神疾患患者数は横ばいで推移している」との認識でしたが、実態とは違っております。

こうした職員の長時間時間外勤務の実態、更には長期病休者における精神疾患の占める割合の増に対し、知事はどのように考えておられ、どのように改善されようとするのか、その対策をお聞き致します。
また、教育職員の長期病休者における精神疾患の割合増加について、教育長はどのように考え、どのように改善されるのかお聞きします。

2点目に、本年2月の県議会において、麻生前知事は、県の財政健全化という前提を示しつつも、「職員を今後ともどんどん減らしていくのがいいかどうかというのは、非常に大きな問題であり、課題である。」また、「職員を減らし、給料を下げて、人件費総額を減らせばいいんだという考え方だけでは、今後はうまくいかない。」という認識を示されました。
この麻生前知事の発言について、小川知事はどのようにご理解されているのか。また、「新行政改革大綱」の主な視点として何が重要と考えられているのかお聞きします。

3点目ですが、片山善博総務大臣は本年3月22日の衆議院総務委員会において、「国が進めた集中改革プランにとらわれて、そのとおりにそれぞれの自治体で減らしていく、そういうことはもう考慮していただかなくても結構だと考えている。」と答弁されています。

この間、地方は国の指導もありましたが、国に先んじて、国以上に厳しい行政改革の取り組みを進めてきました。本県も同様の努力を続けて参りました。

このような観点から、「新行政改革大綱」については単に職員数や人件費を減らすということを視点にするのではなく、本県が行う様々な行政施策も間断なく見直し、行政の成果を重視する行政を実現していかなければなりません。

2.福岡県の産業廃棄物対策について

小川知事は、4月の知事選のときより「県民幸福度日本一」を掲げられ、初当選を果たされました。

この「県民幸福度日本一」につきまして、知事は、「一人一人の幸福の実感、昨日より今日が良くなったと思えるような地域社会を再構築したい。」と述べられています。そして、「県民の生命、財産を守るのは県の最重要課題の一つ、負の部分は改善、解消する」とも述べられています。

この負の部分という点につきましては、県民の社会生活全般を通して考えた場合、たとえば過疎や地域間格差の問題、雇用不安など、様々な社会不安、生活不安があると思います。

そして、今回、私が取り上げます産業廃棄物による環境汚染の問題も、まさしくこの負の部分といえます。そして、この産廃問題は前麻生政権時代に置き去りにされた問題でもあります。

そこで、この産業廃棄物の処分によって惹起した県民の健康被害、地域環境汚染の問題について訴えさせて頂き、その後、知事に質問致します。

福岡県の県央部に飯塚市があります。そして、今回、私が取り上げます産業廃棄物最終処分場問題が起こりました飯塚市内住地区は、飯塚市の一番南に位置する地域であり、篠栗霊場で有名な篠栗町と隣接した場所にあります。福岡市内からは車で約45分程度。山懐に抱かれた、自然豊かな地域であり、粕屋郡から福岡市東区を流れる多々良川上流の二瀬川、そして、遠賀川に流れ込む大野・内住川の源流地点でもあります。

ここ飯塚市内住にあります産業廃棄物最終処分場は安定型処分場で、後ほど詳しく訴えますが、地元住民が県を相手に起こした「義務付け訴訟」では、判決の中でも許可品目以外の廃棄物が投棄されているということが明らかとされました。

このことは、何を意味するかと言いますと、いわばこの最終処分場は県が許可した、いうなれば合法的に設置された処分場であり、合法的に設置された処分場で、脱法的、違法的に産廃処理が行われたという事実を示しています。
そうした脱法、違法な行為によって処分場内に許可品目以外の廃棄物が持ち込まれ、その結果、処分場内には大量の汚水が溜まり、硫化水素ガスが発生するという事象がおこり、平成13(2001)年8月14日、当時の嘉穂保険所の職員が現地処分場に立ち入り調査に入ったことから問題が表面化しました。

その後、地域の住民組織や地元自治体の調査により、地下水汚染といった深刻な環境汚染も発生していることが判り、まさに、地域の生活環境、周辺住民の健康に重大な被害をもたらす結果となっています。

なお、この件につきまして、地元住民は県に対して幾度となく改善要望をしていることは、小川知事もご承知のことと思います。

この処分場問題に対し、周辺住民の方々は平成15(2003)年5月、地裁飯塚支部へ操業停止の仮処分申請を行い、平成16(2004)年9月に操業停止の決定が出されています。

しかし、操業停止の仮処分後、業者は倒産し、埋め立てられた産業廃棄物はそのままとなっています。
そのため、住民の方々は、生活環境を元に戻し、子や孫たちの将来に禍根を残さないという想いから、平成17(2005)年、地元住民13人が原告となり、県を相手に、産業廃棄物の撤去を求める「義務付け訴訟」を福岡地方裁判所に提訴しました。

「義務付け訴訟」とは、平成16年(2004)年の「行政訴訟法改正」で設けられた制度であり、行政が一定の処分をしないと重大な損害が生じるおそれがある場合、住民が裁判所に処分を義務づけるよう求めることができる制度であります。

今回の「義務付け訴訟」は全国初となるケースであり、マスコミも含め、広く全国的に注目されています。

この訴訟の一審では、福岡地方裁判所は平成20年(2008)年2月25日、の判決で、違法な産業廃棄物の処理があったこと、処分場内には違法に捨てられた廃棄物が存在することを認めるとともに、そのために起こった環境汚染を認めました。

しかしながら、「直ちに生命や健康、生活環境に著しい被害を生じさせる恐れがあるとは認めがたい」として、産廃を撤去してほしいという住民の訴えは却下され、そのため、現地には今も安定品目以外の産業廃棄物は残ったままの状況にあります。

原告側は、この決定を不服として、同年3月5日に福岡高裁に控訴しました。

二審の判決は本年、平成23(2011)年2月7日に出され、産廃の撤去など環境保全に必要な措置を講ずるよう業者に命じることを県に義務付ける判決を言い渡しました。すなわち、一審判決を退け、住民が勝訴したことになります。

この判決の中で古賀寛裁判長は「行政代執行や措置命令をしないことで、重大な損害を生じる恐れがある」と指摘し、そして、業者は現在倒産状態にあるため、判決は、実質的に県に対し代執行まで迫る内容となっています。

産廃を巡り、行政に対応を義務付けた判決は全国初であり、今後、全国の都道府県の産廃行政に大きな影響を与えるものとなっています。

しかし、福岡県はこの二審判決を不服とし、本年2月21日、福岡高裁に上告しました。

こうした県の作為に対し、本県議会は本年2月22日、県の上告取り下げを求める決議をほぼ全会一致で可決しています。

その後、福岡高裁(古賀寛裁判長)は本年2月28日、同高裁で敗訴した県の上告について、手続きが不適法だとして上告を却下する決定を行いました。

「民事訴訟法」では、上告手続きに明らかな不備がある場合、最高裁の判断を待たずに高裁が却下しなければならないと定めているわけですが、実際に高裁が却下するのはきわめて異例なことです。

この上告の受理申し立てを却下した理由として、福岡高裁は「地方自治法96条1項12号」は上告には議会の議決が必要と定めているのに、今回は県議会の議決がないと指摘、「上告は不適法」としたのであります。

これに対し、県は、上告を却下した福岡高裁の決定を不服として、本年3月7日、最高裁に特別抗告を行いました。

その理由として、「地方自治法96条には、今回のような義務付け訴訟の提起は除くと規定されており、県議会の議決は上告の要件ではない」と反論し、重要な法令解釈の誤りがあるとして、最高裁で争うための抗告許可を福岡高裁に求めたものです。

そして、本年3月28日、福岡高裁は抗告を許可し、これによって県は今回の案件について上告ができるようになりました。

以上が、今回の「義務付け訴訟」に関する経過であります。

今回、小川知事は「県民幸福度日本一の福岡県」を実現するという政策の視点を表明され、冒頭申し上げました通り、「県民の生命、財産を守るのは県の最重要課題の一つ、負の部分は改善、解消する」とも述べられています。

私は、こうした政治スタンスを基本に、知事は今後の県政を進められると思っており、大変期待しています。そうした期待を込めて、小川知事に質問します。

まず1点目は、今回の裁判につきまして、小川知事はどのように報告を受け、どのように理解しておられるのか、お聞きします。

2つ目は、本県議会では「違法な廃棄物の存在は争い難い事実であり、周辺住民のことを考慮し早急に事態解決を図るべき」との思いから上告取り下げの決議をいたしました。
小川知事は、この県議会における決議の重さをどのように認識され
ているのか。そのことをお聞きします。

三つ目は、「県民の生命、財産を守るのは県の最重要課題の一つ、負の部分は改善、解消する」との知事の決意に従えば、福岡高裁の判決を受け入れることが県民の利益にかなうと思います。
更に、県議会における決議がなされているにもかかわらず、県が上告
をして、どうしても最高裁の判断を仰がねばらない理由とは何なのか。知事の所見をお聞きします。

四つ目は、本件の事象発生から約10年の歳月が経ちます。この間、
地元住民は筆舌につくし難い心身の労苦を強いられており、また、裁判等に関わる費用の捻出も大変苦労しています。
この際、小川知事は、本県議会の「事態解決のための措置を重大なる
決断をもって早急に講じるよう強く求める。」という本旨を重く受け止め、これ以上、地元住民への苦難を強いることなく、早急に支障の除去について対策を講じるべきと考えますが、知事の決意をお聞き致します。

以上、私の質問と致します。