県議会質問

平成23年度 12月定例県議会 一般質問 その1

2011年12月12日

平成23年12月県議会:一般質問「指定管理者制度について」のダウンロード

1.「指定管理者制度」について

11-12-12 12月議会:一般質問.jpg

ご承知のとおり、「指定管理者制度」は、平成15年9月の「地方自治法の一部を改正する法律」の施行によって導入された制度であり、本県では、この法に基づき、現在、38の施設が指定管理となっています。

この「指定管理者制度」の導入目的は、各地方公共団体の公の施設について、「民間事業者等に施設の管理を代行させることによって、住民サービスの質の向上、経費の削減を図りながら、多様化する市民ニーズをより効率的・効果的に対応していく」というものです。

いうまでもなく、管理者を選定するにあたっては、「福岡県指定管理者選定委員会」での審議と選定、県議会の議決を受けて正式に管理者が決定します。当初の制度導入目的の通り、経費の削減が図られつつも、入館者や入場者が増えたり、多様化する市民ニーズを的確にとらえ、より効率的・効果的に施設運営が図られることが前提となります。あくまで制度の成果の実が得られる結果でなくてはなりません。

しかしながら、この間、「指定管理者制度」を全国的に見た場合、只今申し上げました効率的・効果的な施設運営という結果が、全て得られているとは言い難い状況にあり、実施主体であります地方公共団体、さらには、議会、大学や研究機関からも、制度の問題点が多く指摘されているところです。

この問題点につきましては後ほど述べますが、総務省自治行政局長通知にも詳しく列挙されています。

また、こうした制度の問題点に加え、地方公共団体から委任を受けた施設では事故が発生し、当該自治体が損害賠償を支払うという事例も後を絶ちません。

こうした指定管理の施設における事故に関しましては、指定管理者が負担する責任は、地方公共団体が指定管理者に業務を委任する上で取り交わす「協定書」の中で具体的に規定されます。一旦、何か事故などがありますと、その取り交わす「協定書」の内容によって自治体側と指定管理者とで責任の区分が分かれます。

しかし、「指定管理者制度」の導入により、管理委託のときよりよりも、むしろ地方公共団体の責任の範囲が拡大するとの見方もあります。

このように、指定管理を受けた施設での事故等の発生が社会問題化し、同制度の問題点が指摘されるなか、総務省は昨年12月28日、自治行政局長名で「指定管理者制度の運用について」という通知を、各都道府県知事、各指定都市市長、各都道府県議会議長、各指定都市議会議長あてに発出しています。このことについては、小川知事もご承知のことと思います。

この通知では、「指定管理者制度は、その導入以降、公の施設の管理において、多様化する住民ニーズへの効果的、効率的な対応に寄与してきたところですが、地方公共団体において様々な取組がなされる中で、留意すべき点も明らかになってきた」ことから、新たな留意点について助言するとなっています。

すなわち、
1つには、単なる価格競争による入札とは異なるものであること。
2つ目に、指定期間については、公の施設の適切かつ安定的な運営の要請も勘案し、施設の設置目的や実情等を踏まえて定めること。
3つ目に、複数の申請者に事業計画書を提出させ、各施設の態様等に応じて適切に選定を行うこと。
4つ目に、リスク分担に関する事項、損害賠償責任保険等の加入を盛り込むこと。
5つ目に、指定管理者において労働法令の遵守や雇用・労働条件への適切な配慮を求めること。
6つ目に、個人情報が適切に保護されるよう配慮すること。
7つ目に、指定期間が複数年度にわたり、かつ、地方公共団体から指定管理者に対して委託料を支出することが確実に見込まれる場合には、債務負担行為を設定すること。

このように、先ほど述べました同制度の特徴的な問題点がすべて網羅され、制度の適切な運用を求めた内容となっています。

そして、この自治行政局長通知を受け、本年1月5日、当時の片山総務大臣が記者会見において、『いろんな自治体で指定管理者制度が「コストカットのツール」として使われてきたこと、「本来指定管理になじまないような施設」にまでこの制度が使われてしまっていること、アウトソーシングを進めたことによって「官製ワーキングプア」を大量に作ってしまった』ことなどについて率直に反省の弁を述べられています。

そして、『「行政サービスの質の向上」という「一番のねらい」にそって指定管理者制度が運営されることと、職員の非正規化が進んできたということを見直し、「業務と職員のバランス」を、自ら考えていってもらいたい。
「指定管理者制度」そのものを撤廃するという趣旨ではないが、これまで総務省としても「指定管理者制度」の問題点として指摘してきたことを踏まえて、行政サービスの質の向上、住民の満足度の向上という観点から、「指定管理者制度」の適正な運営を求めたものであり、きわめて重要な意味を持つものである。』との見解を示されています。

「指定管理者制度」の導入から8年、全国的にも「指定管理者制度」の問題点が様々指摘され、総務大臣の見解も出されるなど、指定管理の在り方が見直され、改善が求められています。