県議会質問

2013年6月13日

Ⅰ.知事の基本姿勢について

民主党・県政クラブ県議団の原中誠志です。会派を代表して質問致します。
梅雨入りした中での代表質問となりますが、昨年7月の九州北部を襲った集中豪雨により、亡くなられた方々や、被災地のことを思い出さずにはいられません。

今年の梅雨は、例年より降雨量が多く、集中豪雨が起きる可能性があります。復旧の遅れがさらなる災害を招かないよう、迅速なる復旧工事を強く望み、被災地の皆様の不安を早く払拭できることを心から願い、質問に入ります。      

(1)地方政府の責任と役割について

先の2月県議会は、知事にとって、新政権を受け初めての議会でした。
その当初予算の説明にあたり、歴代知事の中で、初めて「地方政府」という言葉を使われ、その果たす3つの役割を、雇用の場の確保。額に汗水流して働いた人が報われ、幸せを実感できる社会。身の丈にあった日本と世界への貢献と明言され、これらが、県民幸福度日本一となる、知事の地方政府のキーワードであることが明確となったところです。

私たちの会派は、これまで地域主権で成り立つ「地方政府」とは、国と自治体との関係を見直し、無駄をなくし、そのためには税財源と権限移譲を進めていく。その中で、地域主権の時代を確立し、住民本位の、創意工夫ある自治体運営が出来ると、問い続けてきたところです。また、県と市町村自治体との関係も、そうあるべきと考えます。

そこで、知事に5点、お尋ねします。
1点目は、どのような地方政府をつくっていくのか、また、知事が述べられた3つの役割を果たすことで、県民幸福度日本一をどのように実現しようとされるのか、お尋ねします。

2点目は、これまで行われてきた、「小さな政府」と、今回の「地方政府」との関係について、お尋ねします。

これまで、本県における、自治体自らの地方政府に関する論議は、2000年以降の「骨太の方針」には、社会保障費の抑制などに問題があり、そのために、会派で、「小さな政府」の趣旨について質問を行なってきました。

当時、歳出改革を加速化させる是非を問う、「小さな政府」の質問に対して、前知事は、「本県が有効、効率的な自治体になるべき。行政改革、事務事業の選択、職員数が少なくなる。結果として小さい政府になっていく。これが、分権時代にふさわしい県庁づくり。」と答弁されました。

県は国に先立ち、1997年度から、財政健全化指針を打ち出し、緊急財政改革、財政構造改革プラン、引き続き、新財政構造改革プランを断行しました。その結果、2011年度までの15年間で、先の2月議会で、会派が指摘した人件費の総額抑制のみならず、事務事業の見直し、建設事業費の規模抑制、さらに、県民のセーフティーネットである社会保障費の抑制など、その抑制・削減効果は、累積4、992億円にまで及びました。

実際、15年前の当時、職員数は知事部局・教育委員会・警察合わせて56、234人だったのが、改革後は50、254人と1割強も減少し、知事部局に至っては、10,548人から8,084人と、24%も人員が削減されたことになります。

その間、逆に人口は、497万人から508万人と、11万人、2.2%増加しました。その結果、職員の負担増、病休・精神疾患の増加、その中で、行政サービスを維持向上させるために、県職員のモチベーション維持など、さまざまな課題をかかえながら、今に至っています。

そこで、行政改革・人件費を含めた総額抑制という改革で進められた、これまでの「小さな政府」の県政運営手法と対比して、「地方政府」は、どのような県政運営手法で自治権を行使されるのか、お尋ねします。

3点目は、国と地方との関係についてお尋ねします。
地方交付税は、そもそも、地方の固有の財源であり、本来、国が地方交付税の使途に条件をつけたり制限することは、地方交付税法の機能を否定するものです。

しかも、地方が職員数を減らし、人件費抑制に努めてきた実態と努力を無視するものであり、このことは、中央と地方の関係が上意下達になっている何ものでもなく、地方分権の流れに逆行するものであると考えます。

その上で、今回、知事は財政調整等3基金の残高が、88億円まで減少することで、将来の予算編成に支障が生じるとして、苦渋の選択で、今回、県職員の人件費削減措置を提案したとしました。
しかしながら、職員の生活に影響を及ぼすばかりでなく、地域の中小企業など、地方公務員の賃金を参考に給料表を作っている職場にとっても大きな影響を与え、地域経済への影響は計り知れません。

これら一連の中央主権的な動きがもたらした、国と地方との関係について、知事はどのように受けとめてあるのか、お尋ねします。
また、4点目は、今回の一連の問題は、賃金引上げでデフレ脱却、3%の経済成長をめざす国の動きについて、先に申しあげまし地域経済の影響を考えると、公務員の賃金引下げは、国の施策の整合性とも合わせ、知事は、どのように考えてあるのか、お尋ねします。

5点目は、道州制についてです。今国会での提出が予想される道州制推進基本法について、全国知事会の副会長である埼玉県知事は、「中央省庁の統廃合の方向性が明確になっていない。」と、修正を要求しました。

道州制は、国の権限と財源を大幅に移すため、省庁の統廃合は不可避と考えます。知事の道州制推進基本法に対する考えをお聞きすると共に、全国知事会と連動した、今後の取り組みについてお尋ねします。

【知事の回答】
①地方政府について

  • 内政に関することは、思い切って地方に任せ、その創意工夫を活かして効率的に行政を行えるよう、国と地方の役割を変えていくことが必要。
  • そのため、国の事務・権限の地方移譲を進め、役割に応じて地方が自ら税財源の在り方を決定できるよう、地方分権を進めていくことが重要。

②地方政府の役割を踏まえた県民幸福度日本一の実現について

  • 地方政府の役割を果たすためには、本県の強みを最大限に発揮させ、まず福岡県を元気にする必要がある。
  • このため、経済のパイを大きくし雇用の場の確保に全力を挙げている。グリーンアジア国際戦略総合特区の推進、中小企業の総合的な支援などにより足元を固める一方で、本県の強みを活かした成長産業を育成している。人類の進歩と基礎科学の発展にも貢献するILCの誘致実現に向けて産学官議会一体となって取り組む。
  • 頑張った人が報われ幸せを実感できる社会をつくるため、生活者の視点を一層重視し、県民の皆様一人ひとりに寄り添い、向き合う行政を心掛けている。
  • 県民生活の基本である安全・安心は重要な課題。公共施設の耐震性や長寿命化を進め、地域防災力を強化するなど、ハード、ソフト両面からの防災・減災対策に取り組んでいる。
  • これらにより、県民生活の安定・安全・安心を向上させ、県民幸福度日本一の福岡県づくりを進めている。福岡県を元気にすることで、日本そして世界の発展に貢献する。

③地方政府の県政運営手法について

  • 地方分権の進展に伴い地方の裁量と責任が一層高まる中、県が必要な行政サービスを持続的に提供していくには、行政運営の効率化が不可欠。
  • このため、昨年3月に策定した「行政改革大綱」に基づく不断の見直しを通じて、地域の実情や県民ニーズに的確に対応できる体制を構築し、県民の視点に立って、地方が自ら考え、自ら決定する分権時代にふさわしい県政運営を進める。

④国と地方の関係について

  • 地方公務員給与の削減要請について、国が、地方が独自に取り組んできた行財政改革の努力を適切に評価せず、地方固有の財源である地方交付税を、地方との十分な協議を経ないまま、国の政策目的達成のために削減したことは遺憾であり、地方自治の在り方から見て課題を残したと考えている。
  • 国の措置に対して、全国知事会においても、再三、国に強く申し入れを行っており、5月20日の九州地方知事会においても、国の政策目的達成の手段として地方交付税等を一方的に削減することは二度と行わないこと、今後の公務員の総人件費や給与の在り方については十分な協議を行うこと、その際、地方が国に先んじて行財政改革を実施してきたことを十分踏まえることを求める特別決議を採決したところ。
  • 今後とも、地方が地域の実情にあった行政を自らの判断と責任の下で実施できるよう、地方分権を着実に推進していかなければならないと考えている。地方行政、地方財政など地方に係る政策について地方の自立性や自主性が十分発揮できるよう、地方6団体や九州地方知事会とも十分連携し、「国と地方の協議の場」等を通じて、引き続き国に強く働きかけていく。

⑤デフレ脱却のための国の施策と、給与削減要請の整合性について

  • 国の給与削減要請については、単に予算を削減するのではなく、減額した部分を、地域の防災・減災事業へ積極的な取り組みや、喫緊の課題である地方経済の活性化に活用することを通じ、地域においても国の緊急経済対策の効果を波及させていこうとするものだというふうに認識している。
  • 一方、地方交付税等の大幅削減に伴い、本県の財政調整等三基金の残高が大幅に減少し、このままでは、県民に、必要な時期に必要な行政サービスを提供していくことが難しい状況に直面したことから、職員の給与減額という苦渋の判断に至った。
  • 本県としては、国の予算を最大限に活用しつつ14ヶ月予算を編成し、防災・減災対策をはじめ、地域の「景気・経済・雇用対策」に全庁あげて取り組んでいる。このような取り組みを通じて経済をしっかり回復軌道に乗せ、本県経済のパイを大きくし、雇用機会を増やしていきたい。

⑥道州制推進基本法について

  • この法律は、道州制導入の在り方について具体的な検討に着手するため、その検討の基本的な方向及び手続きを決めることを目的としている。
  • 「基本的な方向」によって、将来めざすべき道州制が形付けられることから、法案化にあたっては地方の意見を十分反映すべきである。
  • 4月の全国知事会では、「中央政府そのものの見直しが道州制の大前提である」などの意見を取りまとめ、与党に申し入れた。さらに、7月に開催される全国知事会では、法案に対する課題や道州制の在り方を議論することとしている。
  • 道州制への移行は、国と地方双方の政府を再構築し、地方分権を推進するためのものであることを明確にした上で議論を進めるよう、政府・与党に働きかける。