Ⅱ.視察報告

2.「沖縄県森林資源研究センター」

(4)松くい虫対策の研究について

同センターでは、松くい虫防除対策について、大きく二つの取り組みを進めている。一つは、「松くい虫天敵野外定着と密度維持の研究」。二つ目は、「松くい虫抵抗性松の選抜育種研究」である。

①「松くい虫天敵野外定着と密度維持の研究」
松くい虫被害は、病原虫マツノザイセンチュウという体長1ミリもない線虫がマツの樹木内に入ることで起こる。線虫はマツノマダラカミキリに乗り移り、マツからマツに移動し被害を拡大させる。

そこで、同センターは松くい虫=マダラカミキリに寄生するクロサワオオホソカタムシを人工増殖させ、天敵として野外定着させる研究を行っている。

クロサワオオホソカタムシは集団飼育が可能であり、25 ℃下における卵から成虫までの日数は平均 74 日である。また、産卵前期間は34〜88 日であり、1雌あたりの年間産卵数は1,400個を超える。

クロサワオオホソカタムシの増殖は蛹粉と乾燥酵母を主成分とする人工飼料で飼育できることから大量増殖できる。今後、実用化に向け、大量増殖、放飼適用条件解明を図っている。

クロサワオオホソカタムシ.jpgクロサワオオホソカタムシの宿主となるハチノスツヅリガクロサワオオホソカタムシの幼虫.jpgクロサワオオホソカタムシの幼虫クロサワオオホソカタムシの成虫.jpgクロサワオオホソカタムシの成虫

②「松くい虫抵抗性松の選抜育種研究」

抵抗性マツの苗木.jpg抵抗性マツの苗木

育成ハウス.jpg育成ハウス

次に、「松くい虫抵抗性松」の選抜育種についてである。現在、研究所ではリュウキュウマツのうち、特に抵抗性の高い11家系を抵抗個体として選抜し、育種している。

松枯れを引き起こす原因は、マツノザイセンチュウが樹幹内で活動すると、松の生体反応から水を吸い上げる働きが阻害され、枯れてしまうわけだが、マツノザイセンチュウの樹幹内での活動に抵抗性が高い松を選抜し、育種しているのである。

抵抗性を持つ11家系の個体の中には、90%を超える生存率を示すものもあるものの、平均生存率は39.0%であり、今後はすぐれた個体の恒常性(子孫に親木の遺伝子が伝わるのか)、苗木の飼育などに取り組み、将来的には抵抗性松として県内に植林していく。A

③ センター内の各研究室

DNA実験室.jpgDNA実験室遺伝資源保存室.jpg遺伝資源保管庫機能成分分析室.jpg機能成分分析室
森林害虫実験室.jpg森林害虫実験室線虫培養室.jpg線虫培養室天敵培養室.jpg天敵培養室
研究員.jpg研究員