「ラオス人民民主共和国」視察報告 その7

Ⅸ.視察報告

3.1月31日:ビエンチャン

1月31日、ルアンパバンの視察を終え、空路、ビエンチャンに入りました。

(1)「JICA Laos」(Japan International Cooperation Agency Laos)

JICA Laos.pngビエンチャン最初の視察は、「JICA Laos」です。

「JICA Laos」は、ビエンチャンのメインストリート(SOUPHANUVONG Av.)沿いにあります。(SIHOM COMMERCE CENTER BUILDING 3rd 左から、戸川所長、所員、オンパンダラさん.png左から、戸川所長、所員、オンパンダラさんFloor, Building No. 006 Souphanuvong Avenue,Ban Sihom, Chanthabouly District, Vientiane City, LAO P.D.R.

当日は、JICAラオス事務所・戸川正人事務所長に加え、事務所員2名。そして、ラオス国立大学経済学部で講師を勤められているオンパンダラさん(Phanhpakit ONPHANHDALA ,Ph.D.)が同席されました。

まず、戸川所長から「JICAラオス」の事業報告や課題の説明を受け、その後、質疑応答に入りました。戸川所長の説明の概要は、以下のとおりです。

『日本とラオスとの外交関係は1955年に樹立されており、また1965年に青年海外協力隊が初めて派遣された国の一つでもあり、日本とラオスとの関係は非常に良好です。この良好な関係は、ODA案件を記念する切手や紙幣がラオスで複数発行されていることにも表れています。

ミレニアム開発目標(MDGs)の達成と2020年までの低開発途上国(LDC)からの脱却を目指 すラオスは、近年、経済成長が目覚ましく、過去5年のGDP成長率は7%台後半で推移し、2010年には一人当たりの名目GDPが1,000ドルを超えました。

しかしながら地方部ではいまだ社会サービスへのアクセスが困難で、保健や教育においてMDGsの達成が危ぶまれています。JICAはインドシナ半島の中央に位置するラオスに対し、ASEANが進める経済統合、連結性の強化、域内の格差是正を図る観点から、経済・社会インフラ整備、農業の発展と森林の保全、教育環境の整備と人材育成、保健医療サービスの改善を重点分野として、ラオス政府が目指すバランスの取れた経済発展を支援しています。

2012年1月、JICAが実施した「ラオス国首都ビエンチャン都市開発マスタープラン策定プロジェクト」がラオス政府の閣議において承認を得ました。

このマスタープランでは、ビエンチャンには、マルチコア都市構造(Multi-core Structure)が望ましいと提言しています。
マルチコア都市構造は、サブセンターやアーバンクラスターなどの都市拠点を新たに創出することで、既成の中心市街地の拡大に伴う過剰かつ無秩序な都市機能の一極集中を回避することを狙いとしています。

高層ビルが立ち並ぶような一極集中型の都市ではなく、「環境との調和がとれた街」を目指すことがラオス政府内で確認されたことになります。

2030年を目標年次とした首都ビエンチャンの開発計画策定に日本が貢献し、それをラオス政府が承認・共有したという意義は極めて大きいといえます。今後は、同マスタープランに基づいたインフラ整備などを促進する必要があると考えています。

ラオスの強みを活かした開発という意味では、環境面や財政面への影響を考慮した、電気自動車等の低公害型の交通システムの導入なども検討に値すると考えています。

ラオスは、石油輸入の替わりにクリーンな再生可能エネルギーである水力により発電した豊富な電力を国内運輸部門のエネルギーとして活用することが可能です。

豊富かつ安価な電力に加えて、1)内陸国であること(Land-linked Country)、2)車両登録台数が少ないこと(転換が容易)、3)ラオス政府が積極的な姿勢を示していること、4)ODA投入の可能性があること、といった電気自動車導入の条件が比較的整っているといえます。

低公害型の交通システムの導入によって、CO2排出を伴わない「エコ・シティ」「エコ国家」のモデルが実現可能となります。そのためには、日本の先進的な技術を駆使して、例えば都市交通セクターにおいて、より環境負荷の小さい電気自動車等を導入・普及することが現実的であると考えています。

アジアに対するODA予算は縮減傾向にありますが、産公学が連携することにより、日本と被援助国の双方に裨益をするwin-winの関係を構築することは可能だと思います。

ラオスらしい発展を、日本の産公学が一体となって計画的に支援することは、環境に優しい国・社会の実現を支援するという意味で国際益の実現といえるでしょう。JICAラオス事務所としては、引き続きラオスらしい発展を支援していきたいと考えています。』

その後、質疑応答に入りましたが、ラオスの現状と課題について、幅広い分野での意見交換を行うことができました。

質疑応答の様子.png質疑応答の様子戸川所長と写る.png戸川所長と写るJICAラオス事務所前.pngJICAラオス事務所前

戸川所長からご説明頂いた、JICA(日本)によるラオス支援策については、以下のとおりです。(「JICA Laos」ホームページより)

<首都ビエンチャン及びその周辺>

  • ①上級看護助産師育成プロジェクト/2008.11-2012.11
  • ②国立大学ITサービス産業人材育成プロジェクト/2008.12-2013.11
  • ③電力セクター事業管理能力強化プロジェクト/2010.8-2013.2 
  • ④法律人材育成強化プロジェクト/2010.7-2014.7
  • ⑤ラオス日本センター・ビジネス人材育成プロジェクト/2010.9-2014.8
  • ⑥森林セクター能力強化プロジェクト/2010.10-2014.9
  • ⑦JICA-ASEAN 連携ラオスパイロットプロジェクト/2010.9-2015.1
  • ⑧ビエンチャンバス公社運営能力改善プロジェクト/2012.1-2014.12
  • ⑨水道公社事業管理能力向上プロジェクト/2012.8-2017.8
  • ⑩電力セクターガバナンス機能向上に向けた技術支援プロジェクト/2012.6-2013.5
  • ⑪森林資源情報センター整備計画/2010.3
  • ⑫太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画/2010.3
  • ⑬国営テレビ局番組ソフト整備計画/2011.3
  • ⑭首都ビエンチャン市公共バス交通改善計画/2011.3
  • ⑮ビエンチャン国際空港拡張計画/2011.8

<ラオス全域または複合地域>

  • ①アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト フェーズ2/2008.3-2013.3
  • ②母子保健統合サービス強化プロジェクト/2010.5-2015.5[ サラワン県、セコン県、アッタプー県、チャンパサック県(南部4 県)]
  • ③東メコン地域次世代航空保安システムへの移行に係る能力開発プロジェクト/2011.1-2016.1[ カンボジア、ラオス、ベトナム]
  • ④南部メコン川沿岸地域参加型灌漑農業振興プロジェクト /2010.11-2015.11[ ビエンチャン市及び南部メコン川沿岸地域]
  • ⑤保健セクター事業調整能力強化 フェーズ2/2010.12-2015.12
  • ⑥コミュニティ・イニシアティブによる初等教育改善プロジェクトフェーズ2/2012.1-2016.8[ サバナケット県、チャンパサック県、サラワン県、セコン県]
  • ⑦母子保健人材開発プロジェクト/2012.2-2016.2
  • ⑧人材育成奨学計画/2009.5/2010.5/2011.6
  • ⑨国家社会経済開発計画に基づく公共投資計画策定支援プロジェクト/2012.3
  • ⑩幹線道路周辺地区等の安全確保計画/2012.6

JICA(日本)によるラオス支援策.png


(2)ビエンチャンの街の象徴「凱旋門」
凱旋門.pngビエンチャンのメインストリート、ランサン通り(Lane Xang Ave)にある「凱旋門」(ラオス語でパトゥーサイ(Patousay))は、パリの凱旋門を模して作られたものです。

ラオス語で、パトゥーとは「扉」、「門」の意味、サイとは「勝利」の意味ということで、まさに〝凱旋門〟です。

すぐ隣の首相官邸府.pngすぐ隣の首相官邸府ビエンチャンのメインストリートの一つ、ラーンサーン通りの北端にあり、周辺には首相官邸、国会議事堂、各政府機関が立ち並び、首都のシンボル的存在です。

現在の国立墓地.png現在の国立墓地この建物は、ラオス内戦の犠牲者のための慰霊塔として建築され、1960年から建設が始められ、新空港建設に使用されるはずだったセメントで建てられたそうです。       

現在の国立墓地_2.png実際、出来た当初は、階上に遺骨が納められていたそうです(現在、遺骨はビエンチャン郊外の国立墓地に移設されている)。

2000年までは「アヌサーワリー」(記念碑)と呼ばれていました。
朝の8時から夕方5時までの間は上に上ることが出来、ヴィエンチャン市内を一望できるそうですが、私たちが到着したのが夕方5時を過ぎていたため、階上に上がることはできませんでした。

凱旋門の真下に立つと、天井にはラオスの典型的なモチーフ、神々凱旋門の真ん中の天井部   や3頭の像などのレリーフが彩色されています。
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