「ミャンマー連邦共和国」視察報告 その5

  • 2011年2月の大統領選挙にテイン・セイン首相が立候補、当選を果たす。3月に大統領就任。以来、テイン・セイン大統領による改革開放路線が始まる。
  • ミャンマー国内では、自国の製造企業がほとんどないため、日用品を含め、商品は輸入品が多く、そのため物の値段は安くない。
  • 米国の厳しい経済政策が続いているため、国家的に財政も経済も厳しい。
  • 外資系企業の進出については、米国と欧州がほとんどだった。軍事政権下、2003年〜11年まで新規投資は無かった。
  • ミャンマーから日本に輸出する品目の1/2は縫製関係。Yシャツ、靴など。
  • 国民は勤勉で、手先も器用。特に、女性はよく働く。
  • 海外からの工場進出は限られてきた。その一番の原因は、基礎インフラの未整備による。すなわち、電気、水道、道路、鉄道網の整備の遅れである。


  • 1988年にいまの軍事政権が出来た。90年以降、中国がミャンマー(旧ビルマ)に触手を伸ばしてきた。それは、中国からビルマを通じてベンガル湾へ出入り口を確保するためと、ビルマの鉱物資源とガス資源を確保するためである。
  • 中国は、鉱物資源は自国に持ち込み、天然ガスについては、一部を自国に引き込み、他はタイに輸出している。その利益のほとんどは中国が持って行っている。
  • ミャンマーの水力発電についても、開発・建設は中国がやってきたが、発電した電力のほとんどは中国に売電しており、中国のための開発となっている。
  • これまでミャンマー国内の開発では、中国だけがうまい汁を吸って、ミャンマーは収奪されるだけという構図になっていたため、テイン・セイン大統領は中国依存の政治体質を改めようとしている。それが顕著に表れたのが、2011年9月の水力発電用「ミッソンダム」の工事凍結である(イラワジ川上流に中国と共同で建設中だった工事)。そのため、現在、中国との関係でいえば微妙な国家間関係となっている。
  • 大統領は、中国から、欧米、日本をはじめ、他の先進諸国にシフトしている。中でも、日本の投資を望んでいる。ミャンマーは親日派が多く、〝ノーモア・チャイナ〟から〝ウェルカム・ジャパン〟になっている。ウィンウィンの関係を築きたいと願っている。


  • こうした政権側の願いもあり、昨年から今年にかけ、外資系企業の進出も目立っている。日本に限って言うと、全日本空輸はミャンマーへの定期便を12年ぶりに再開する方針を表明。東京証券取引所グループと大和総研は今年5月、ミャンマー中央銀行と証券取引所設立への協力などで覚書を締結し、三井住友銀行は同国最大の商業銀行・KBZ銀行との提携を結んだ。最大都市ヤンゴンだけでなく、新首都ネピドーに駐在員事務所を置く商社も相次いでいる。
  • 昨年から、JETROに日本企業からの問い合わせが急増している。なかでも、駐在員事務所開設の問い合わせが一番多い。それは、いきなり大工場を建設するにはリスクが高いので、まずは情報収集の目的で駐在員事務所を置くということ。


  • 昨年12月、クリントン米国務長官が電撃的にミャンマーを訪れた。米国務長官のミャンマー(ビルマ)訪問は56年ぶりとなり、まさに歴史的な瞬間であった。ミャンマーはASEAN復帰も決定し、いよいよ本格的に民主改革路線を突き進みだしたことを国際的にも示したことになった。
  • クリントン国務長官の訪問後、欧米の企業がこぞってミャンマーに来ている。更に、2012年に入ってからそのスピードはアップしている。
  • 2012年4月のテイン・セイン・ミャンマー大統領の訪日に合わせ、野田首相は日本の円借款3,000億円の放棄を決めた。
  • 丸紅は、同社が2005年に納入したユワマ複合火力発電所(出力3万4,000kw)向けのガスタービンの補修事業を受注した。日立製作所が部品を供給して取り換え、電力供給力向上を図ることとなる。発注元はミャンマー電力公社で、2011年3月に同国が民政に移管し、初めての電力案件となる。ちなみに、ヤンゴン地区の電力需要は、主に丸紅が納入した発電所がまかなっている。
  • また、日立+丸紅+住友商事+双日による企業連合が経済特区ティラワ工業団地の開発計画に参画する。政府は、2015年の次期総選挙までに、日本による大規模工業団地の開発を要望している。


  • 現政権のUSDP(連邦団結発展党)が安定政権を引き継ぐためには、貧困対策、雇用対策、農村対策の「3つの政策」の実行が必要。そのため、現政権は改革開放路線を進め、経済発展を進めていかなければならない。
  • 2015年は、「ASEAN共同体」の実現、ミャンマーの総選挙など、ミャンマーにとっても、アジアにとっても大きな転機と起点の年となる。「ASEAN共同体」が実現すれば、関税が撤廃される、企業淘汰が始まる、国レベルで勝敗が着く。したがって、現ミャンマー政権は総選挙に勝利し、国際競争に勝ち残るため、2015年をにらんでの政策を進めている。
  • 政権は、2015年までに、国民一人あたりのGDPをいまの3倍、約800ドルにしたいと言っている。現実的には1.7倍程度だろうと言われているが、3倍を掲げている。それが大統領の公約である。

以上の報告を受け、質疑応答に入りました。
A