「ミャンマー連邦共和国」視察報告 その6

[軍事政権の改革開放路線は本物か?]

  • テイン・セイン大統領は「この改革は決して逆行させない」と言っている。懸念は、大統領の健康問題。心臓にペースメーカーを入れており、シンガポールにまで治療に行っている。
  • 軍事政権内でも、保守派(守旧派)は大統領の政策をよく思っていない。なぜなら、権益が脅かされる、中国派の人たちが排除される、そのことを不安視している。保守派の急先鋒であり、中国派の副大統領が辞任した。そのポストは、軍人から新しい副大統領を選ぶことになる。軍との関係−掌握こそ政権の行方を左右する。

[スーチーさんの国会議員としての力量は?]

  • スーチーさんの国会議員としての力量は未知数。これまで、議会外から政権批判をしていた立場から、国の政策をどうするかという責任ある立場となった。反対だけで立ちいかなくなるし、国民もスーチーさんの言動・政策を見ている。
  • 現大統領は軍政時代のNo.4。軍人上がりだが、国民の評判はいい。物腰は柔らか、誠実味がある。スーチーさんも大統領を支持する発言が増えている。いまのところ大統領の進める改革開放路線を支持している。
  • スーチーさんが大統領の改革開放路線を支持し、手を結んで進めるのか。それとも、大統領とは違った政策を打ち出すのか。本当の力量は今から試される。

[国民は、今の政権をどう見ているのか?]

  • 国民は、軍政は大嫌いであり、批判している。しかし、テイン・セイン大統領は支持している。政府大臣の言動はマスコミやインターネット情報で国中に流れている。それぞれの大臣の可否、良悪は見られている。
  • 軍人枠から決まる副大統領が誰になるかで、次期大統領選挙の行方も大きく変わってくる。

[今後、どのように経済発展が進められるのか?]

  • 商業大臣は、民間人である。経済に詳しく、日系企業との関係も良く、やり易い。
  • 日本企業の56社が「商工会」登録をしている。
  • 90年代後半から政局があやしくなり、2003年に米国の経済制裁が始まった。その後、経済的な発展が出来なかった。しかし、現大統領になって改革開放政策がはじまり、民主化も進んでいる。これに伴い、諸外国からの進出も目立ってきた。
  • 政治はネピードー、経済はヤンゴンと政経分離が進んでいる。

[これからの経済発展の課題は?]

  • 電力、水、情報、金融、交通など、社会インフラの整備が遅れている。これらの整備が課題。電力は、全体の7割が水力、2割が火力で、その電源は都市部に集中している。しかし、それでも停電などが多い。また、交通インフラもまだまだで、空港もヤンゴン空港くらいで、それもキャパは一杯である。ネピードー空港は中国が開発・建設した。
  • 現在、IT関係の伸びが大きい。
  • 進出企業にとって、人件費が安いのが最大の魅力。

[ミャンマーの社会構成について]

  • 識字率はいい方である。しかし、人口の75%は農村部に住んでおり、農村部の教育水準を高めることが課題。学校は、幼稚園1年、小学校4年、中学校4年、高校2年となっている。学校では、小学校も中学校でも留年が多い。
  • 地方議会はある(7管区議会、7州議会)。地方でも軍政が多い。
  • 徴兵制ではなく、軍人は希望入隊。高等教育を受けれなかった者が軍隊に入っている。一般軍人の給料は安い。
  • 公務員の賃金は3万チャット/月だったが、大統領がいきなり手当を支給すると言って3万チャット/月が上乗せされ、6万チャット/月となった。
  • 「労働法」などが改正され、労働組合の成立、ストも認められるようになった。そのため、縫製工場などではストが多発している。これにより、徐々にだが労働者の賃金も上がってきており、民主化、改革開放労線は、労働者の賃金−人件費を上げる結果ともなる。

[中国との関係は?]

  • これまで、水力発電所の多くは中国が開発・建設し、電気も中国がすべて持って行っている。うまいところはすべて中国が持って行っている。こうした経過があるため、現政権は中国と距離をもつようになった。日本とは〝ウィン・ウィン〟の関係を築きたいと願っている。
  • しかし、今後、いろんなステージで中国が横やりを入れてくる可能性がある。また、権益を韓国も狙っている。
  • ティラワも、日本が中国に横取りされる可能性がある。
  • 政権として、電気、水道など基礎インフラは自国の力でやりたいと思っており、それ以外は日本の円借款を頼りにしている。
  • 下水はないといって等しい。都市部でも、農村部でも、ほとんどタレ流し。ヤンゴンでさえ、上水の普及率は3%程度、下水も3〜4%で、タレ流し。
  • 上水道は、大阪市、北九州市が営業に来ている。


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ミャンマー・タイ_05.png全体の意見交換の様子

12-07-09 JETRO_Yangon.jpgJETRO Yangon事務所